研究課題
癌細胞の不均一性獲得は、エピゲノムによる可塑性に起因するとされている。薬剤耐性や効果予測などに関与し治療過程で変化する癌の不均一性・可塑性の解明には、原発腫瘍からの遺伝子情報よりもリキッドバイオプシーからの遺伝子情報が有利である。我々研究グループは、cfDNAを使ったDNAメチル化解析でいくつかの新規性のある報告を行った。HPV関連中咽頭癌の研究では、細胞株、臨床検体からの網羅的DNAメチル化解析にて抽出したメチル化マーカー候補の21遺伝子から、喉頭、口腔、下咽頭、中咽頭の250サンプルのDNAメチル化解析で中咽頭のみに予後と関連した10遺伝子を抽出し、さらに正常コントロールのリキッドバイオプシーでもメチル化を認める7遺伝子を除外して、CALML5、DNAJC5G、LY6Dの3遺伝子が、HPV関連中咽頭癌における有効なメチル化マーカーでcfDNAからLY6D遺伝子のメチル化が消失(脱メチル化)するという、予想とは異なる現象で、ICI抵抗性を予測するバイオマーカーになると考えられた。本研究では、最近可能になったcfDNAの網羅的メチル化解析法を使って、ICI抵抗性を引き起こす脱メチル化遺伝子の抽出を行い、ICI抵抗性に関与し治療過程で変化する癌の不均一性・可塑性の解明とICI抵抗性を克服する治療法の探索を目指す。2023年度は、HPV関連中咽頭癌細胞株UMSCC47を使って、LY6D遺伝子をsiRNAでノックダウンした後、コロニー数、浸潤能の変化を測定ついて解析を行った。また、LY6D蛋白の免疫染色をHPV関連中咽頭癌ならびにICI治療を行った頭頸部癌症例に行い解析を行った。現在、これらの解析の評価を行っている。
2: おおむね順調に進展している
HPV関連中咽頭癌細胞株UMSCC47を使って、LY6D遺伝子をsiRNAでノックダウンした後、コロニー数、浸潤能の変化を測定ついて解析を行った。また、LY6D蛋白の免疫染色をHPV関連中咽頭癌ならびにICI治療を行った頭頸部癌症例に行い解析を行った。
HPV関連中咽頭癌細胞株UMSCC47を使って、LY6D遺伝子ならびに網羅的cfDNAメチル化解析で抽出した遺伝子をsiRNAでノックダウンし、ノックダウンした細胞とノックダウンしていない細胞からRNAを抽出しRNA-seq解析を行い、ノックダウン遺伝子のICI薬抵抗性の作用機序を網羅的解析で生物学的解釈を今後行う予定である。
2022年度は、細胞株と使った研究と臨床検体の免疫染色を行う実験を行った。研究は計画通りに進んでいる。今後は、網羅的解析を含めた研究を行うため経費を使用する予定である。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
Current Problems in Cancer
巻: 46(2) ページ: 100834
10.1016/j.currproblcancer.2021.100834