研究課題/領域番号 |
22K16928
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
山原 康平 帝京大学, 医学部, 講師 (00909153)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | シスプラチン / 内耳 / インスリン様細胞成長 因子1 |
研究実績の概要 |
本実験系における適切なCDDP濃度と投与時間を決定するため、幼齢マウスの感覚上皮を摘出し、様々な濃度および投与時間のCDDP投与を行った後染色しそれぞれの群の蝸牛基底回転の外有毛細胞数を計測したところ、濃度10 uMのCDDPを36時間投与した群で約50%の外有毛細胞傷害を起こすことが分かり、以後の実験でこの傷害モデルを使用した。IGF1のCDDPによる有毛細胞傷害への効果を見るため、CDDPのみを投与した群、CDDPとIGF1を同時投与した群の計3群に分け培養を行ったところ、IGF1とCDDPを同時投与した群はCDDP単独投与した群に比較して統計学的有意に生存有毛細胞数が多い結果であった。投与したIGF1による外有毛細胞保護効果が、有毛細胞上のIGF1受容体への結合によって発揮されたものかを調べるために、IGF1受容体の競合的阻害薬(JB1)を用いた実験を行った。CDDPのみを投与した群、CDDPとIGF1を同時投与した群、CDDPとIGF1とJB1を同時投与した群の3群に分けたところ、JB1を使用した群でIGF1の保護効果が減弱されることが確認された。有毛細胞数を保つためには「細胞死の抑制」と「細胞増殖」の2つの機序が重要であるが、IGF1のCDDPからの外有毛細胞保護効果がいずれの機序から成立しているのか調べるために、それぞれアポトーシスマーカーであるcleaved caspase-3染色と細胞増殖マーカーであるBrdU染色を使った実験を行ったところ、IGF1とCDDP同時投与群はCDDP単独投与群と比較して、cleaved caspase-3陽性細胞は統計学的有意に少ない結果であったが、BrdU陽性細胞に関しては両群で有意差は認めなかった。以上の結果から、IGF1はその受容体を介し、主に抗アポトーシス効果を持つことでCDDPから外有毛細胞を保護することが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究者が異動したため
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今後の研究の推進方策 |
CDDPの有毛細胞障害の細胞内機序として、活性酸素種の役割が報告されている。IGF1による有毛細胞保護効果に、活性酸素種を抑制する効果が含まれるのか、器官培養系を用いて調べる。 また成獣動物を用いた実験を同時並行して進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者が異動したため、実験が滞った。
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