前年までの研究で、インスリン様成長因子1(IGF1)がシスプラチン(CDDP)からの耳毒性を抑制する効果を持つことが分かった。CDDPは一般的に活性酸素種を発生させ、この酸化ストレスにより耳毒性を起こすことが知られている。IGF1がCDDPによる活性酸素種を抑制することで耳毒性を抑制すると仮説を立てそれを検証する実験を行った。酸化ストレスの指標として還元型グルタチオンと酸化型グルタチオンの比率(還元型酸化型グルタチオン比)を用いた。培養液のみ、CDDP単独、IGF1とCDDP同時投与の3群を36時間培養して、均質化した後、発色させ測定したところ、IGF1とCDDP同時投与群はCDDP単独投与群と比較して還元型酸化型グルタチオン比が大きい結果であり、IGF1はCDDPによる酸化ストレスを減弱させることが分かった。
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