研究課題/領域番号 |
22K16949
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
鈴村 文那 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院助教 (10896989)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 糖尿病網膜症 / 細胞老化 |
研究実績の概要 |
令和4年度と同様、糖尿病モデル動物としてストレプトゾシン誘発糖尿病モデルマウスを用いて、老化マーカーであるp16INK4aを発現している細胞の局在を免疫染色で確認した。網膜神経節細胞のマーカーであるNeuN陽性細胞の一部とp16INK4a陽性細胞が共陽性であり、網膜神経節細胞の老化が疑われた。また、当初予定していた糖尿病網膜症患者の硝子体サンプルからはp16INK4aの発現が確認できなかったが、糖尿病患者のドナー眼を用いて網膜flat-mount標本における網膜神経節細胞数をカウントしたところ、対照眼と比較して減少する傾向が明らかになった。そのため、糖尿病により網膜神経節細胞が老化して、細胞障害を受ける可能性について検証していくことにした。 一方、GLS1阻害剤を用いた追加実験での再現性を考慮し、今年度はセノリティック薬として他科でも用いられているダサチニブとケルセチンの効用を検証することにした。昨年度と同様の項目を確認したところ、ダサチニブとケルセチンの投与による体重減少や血糖上昇といった全身状態に変化はなかったが、網膜電図において糖尿病モデルマウスの律動様小波の振幅低下が有意に抑制された。また、炎症性サイトカインであるMCP-1やp16INK4aの発現も有意に改善した(いずれもp<0.05)。これらの結果は第77回臨床眼科学会のシンポジウムにて発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
老化細胞の同定ならびにヒトサンプルを用いた検証を進めることができた。途中で変更した治療薬でも効果が確認できており、おおむね仮説通りの結果が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
同動物モデルマウスを用いて、網膜電図による網膜神経節細胞の機能評価を行う。また、昨年度マウス網膜から網膜神経節細胞を単離する方法を他施設にて習得した。これを用いて細胞老化と細胞障害のメカニズムの解明を進めていく。また、ヒトドナー眼の網膜切片を用いてp16INK4aの局在や発現を確認していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
動物モデルを用いた網膜神経節細胞の機能評価や、細胞を用いた老化マーカーや炎症性サイトカインの発現などの確認が未施行であり、これらを遂行する予定である。
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