研究課題/領域番号 |
22K16951
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
小林 正明 山口大学, 医学部附属病院, 学術研究員(寄附金) (70845015)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | nAMD / BPUs / RPE / CNV / 線維化 / MRTF / SRF |
研究実績の概要 |
nAMD(滲出型加齢黄斑変性)治療の第一選択薬である抗VEGF(血管内皮増殖因子)薬は根治的ではなく、治療抵抗例も見られることから、新規治療薬の開発が強く望まれる。新規に合成したBPUs(ベンゾイルフェニルウレア誘導体)から得られた化合物であるBPU17を用い、RPE(網膜色素上皮)細胞におけるメカノストレスを基点としたnAMDの発症、CNV(脈絡膜新生血管)および線維化における分子機序の解明を行い、抗VEGF薬に代わる新薬へ発展させることを目指す。本研究は、nAMDの病態がRPE細胞と関連するという考えに基づき、RPE細胞におけるMRTF(ミオカルディン関連転写因子)の作用機序を解析することで、BPU17が持つCNV、および網膜下線維症に対する作用と分子機序を明らかにして、nAMD治療薬として臨床応用の可能性を検討することを目的としている。 BPU17はRPE細胞の遊走能に抑制的に作用することを明らかにした。BPU17はRPE細胞におけるCOL1およびα-SMAの発現を抑制することが明らかになり、BPU17がRPE細胞の上皮間葉系移行に対して抑制的に作用することが示された。また、RPE細胞より抽出したタンパク定量において、BPU17がMRTFをCofactorに持つSRF(血清応答因子)の発現に作用することを明らかにした。in vivoでは、BPU17がCNVおよび網膜下線維症に対して濃度依存的に抑制的に作用することを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①BPU17がRPE細胞の遊走能に与える変化の検討、②BPU17と培養したRPE細胞から抽出したタンパク質によるイムノブロット、およびmRNAによるリアルタイムPCR法を用いた解析、③C57BL/6Jマウスを用いたCNVモデルによるBPU17のCNV抑制効果の検討、④C57BL/6Jマウスを用いた網膜下線維症モデルによるBPU17の線維化抑制効果の検討、⑤MRTF遺伝子ノックダウンマウスの作製、およびその標本を用いた免疫組織学的検討を実施した。①はScratch wound healingにおけるControl群との相対的面積で評価を行い、BPU17濃度依存的に細胞遊走が抑制された。②はイムノブロット法にてCOL1、α-SMA、SRFでBPU17が抑制的に作用したが、MRTFでは有意差が得られなかった。③および④はBPU17濃度依存的に抑制的に作用した。⑤のin vivo assayは、現時点で検討不十分である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究で得られたデータに基づいて論文投稿を予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の研究計画の一部に遅れや検討の不十分が生じている。また、研究者の勤務形態の変更によって、研究に充てるエフォートが低下したことも、研究費の次年度使用額が生じた要因である。令和6年度は、追加検討を要するアッセイの他、研究課程で明らかになった因子についてデータの蓄積を行い、得られた結果を基に論文投稿を行う。研究費の未使用額は、実験動物の購入や飼育、必要試薬の購入、論文投稿、学会発表などに充てる。
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