ぶどう膜炎は過剰な免疫反応により眼内炎症を生じる眼疾患であり、ステロイドにより急性期の炎症を沈静化する治療を行うが、局所・全身治療ともに副作用が伴う。本研究ではステロイド治療に代わる新治療法開発を目的として、オメガ3脂肪酸が抗炎症効果や血管新生抑制効果における樹状細胞の役割とその調整機構について検討した。 前年度までの研究で、オメガ3脂肪酸は樹状細胞に作用し、T細胞の増殖能、Th1関連炎症性サイトカインであるIFN-γやTh17関連炎症性サイトカインであるIL-17を抑制することで、眼内炎症を沈静化することが実験的自己免疫性ぶどう膜炎(EAU)で明らかとなった。 今年度の検討では、オメガ3脂肪酸の摂取により樹状細胞の発現系に変化があるかどうかについて検討するため、樹状細胞の表面マーカーであるCD11cおよび免疫系由来細胞の表面マーカーであるCD88に対する抗体を用いて、表面抗原をフローサイトメトリで解析した。オメガ3脂肪酸あるいはオメガ6脂肪酸を含有した特殊飼料を摂食させたマウスから脾臓を摘出し、免疫細胞を回収後にMACSで樹状細胞分画のみを濃縮してフローサイトメトリを行った。その結果、オメガ3脂肪酸摂食マウスの脾臓由来の樹状細胞分画ではCD11C+CD88+細胞およびCD11c+CD88-細胞が減少し、オメガ6脂肪酸摂取マウス由来の脾臓由来の樹状細胞ではCD11C-CD88-細胞が減少していた。この結果より、オメガ3脂肪酸はマウスの脾臓由来の樹状細胞の表面マーカーを変化させ、樹状細胞の形質を転換させることにより、眼内炎症を抑制している可能性が示唆された。
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