研究課題/領域番号 |
22K16955
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
寺尾 信宏 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (80827361)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 中心性漿液性脈絡網膜症 |
研究実績の概要 |
研究目的は、中心性漿液性脈絡網膜症(CSC)において脈絡膜肥厚、脈絡膜血管拡張、脈 絡膜血管透過性亢進などの画像所見で表現される脈絡膜異常と、それに引き続く脈絡膜新生血管(CNV)形成と言うCSCに認められる2つの病態をつなぐ分子機序を解明し、その病態本質に即した適正な医療体系を提供することにある。今年度はVEGF以外の血管作動性、血管抑制因子の前房水内動態を解析することで、脈絡膜異常およびCNV形成に関与する主要なサイトカインを同定することを目標とした。CNV陽性CSC(pachychoroid neovasculopathy:PNV)、滲出型AMD、正常コントロールにおいて少数例で血管新生に影響すると考えられる前房水サイトカイン測定した。PNV、滲出型AMDについては初診時、抗VEGF加療3か月後。治療後再発時の血管作動性・抑制因子を測定した。候補とした血管作動性・抑制因子はAngiogenin 、Angiopoietin-1 、Endostatin、FGF-acidic、FGF-basic、PDGF-AA、PDGF-BB、PlGF、Thronbospondin-2、VEGF、VEGF-D。結果、Angiopoietin-1はPNVにおいて初診時と比較して、抗VEGF加療後の再発時にAngiopoietin-1が低下する傾向が認められた。EndostatinはPNVにおいて再発時にEndostatin濃度が低下していたが、滲出型AMDではEndostatin濃度に変化を認めなかった。Thronbospondin-2は滲出型AMD、PNVにおいて初診時のThronbospondin-2濃度が正常コントロールより高かった。Angiopoietin-1、Endostatin、VEGF、Thronbospondin-2についてはPNVおよび滲出型AMDと関わりがある可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
未治療のAMD、CNV陽性CSC(PNV)患者の受診率が低下している。原因としては、AMD、PNVに対する診断が多種の検査機器に発展に伴い非侵襲的に正確に診断できるようになったことや、それに対する治療(抗VEGF加療)がクリニックでも積極的に行われるようになったためと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
視力予後良好な疾患とされてきたCSC患者の中に存在する重篤な視力障害に繋がるCNV病態を有する患者(PNV)を前房水の血管作動・抑制因子の測定により的確に診断し、本研究で見出されるVEGFとは異なる血管作動・抑制因子により、CSC患者固有の病態である脈絡膜異常の修復と言う革新的な医療の樹立につなげる。特に、CNVを伴うPNV患者救済には、抗VEGF加療にかわる患者の個別病態に即した適正な医療体系の提供が不可欠であると考えている。本研究は間接的に滲出型AMD患者の適正医療にも有益であることは論をまたない。今後の展開として、症例数を増やして、関与の可能性があるサイトカインに注目し、CNV発症と脈絡膜異常について脈絡膜画像解析技術を駆使して定量化し、分子動態と関連づけることで脈絡膜異常の分子機序を標的とした診断・治療開発への基盤技術の提供につなげたい。CSCにおける慢性病態としての脈絡膜異常に関与する分子については、本研究期間内に同定された場合は、脈絡膜組織における発現を免疫組織学的に検証し臨床POCを確立する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
未治療AMD、CNV陽性CSC(PNV)患者の受診率の低下、コロナ禍のため学会出張を控えたため、使用額に差が生じています。次年度は後れを取り戻すため、追加で人件費(研究補助員)などを算出する予定です。
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