ウイルスベクターを用いてエンドセリン1を導入し、血流を低下を誘導したマウス個体の作製をおこなった。ヒトエンドセリン1(hEDN1)のcDNA全長を導入したウイルスベクター(AAV8-CMV-hEDN1)を、尾静脈に注入したマウス個体は、全身での血流低下を誘導され、脈絡膜血流においてもLSFGで血流低下が誘導されていることが確認された。しかし、ウイルスベクター導入後に死に至る個体が認められたため、尾静脈に導入し全身の血流低下を誘導したモデルは、全身への影響が強く本研究に適さないことが判明した。次に、AAV8-CMV-hEDN1をマウスの硝子体内に投与し眼局所の血流低下を誘導した個体での脈絡膜血流と網膜神経節細胞への影響を評価した。コントロールには同様の量のAAV8-CMV-EGFPを用いた。4週間後、LSFGにより網膜血流を測定したところコントロール群と比較してヒトエンドセリン1過剰発現群において眼血流の低下が認められた。その後、網膜を摘出し抗RBPMS抗体により網膜神経節細胞を染色したところ、視神経乳頭周囲ならびに網膜周辺部においては網膜神経節細胞数の減少を認めなかったが、網膜中心部においては網膜神経節細胞数の減少を認めた。本結果は、エンドセリン1による血流障害が網膜神経節細胞の細胞死を誘導することが示された。さらには、血流低下に対して脆弱な部位ならびに網膜神経節細胞のサブタイプが存在する可能性を示唆された。
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