研究課題/領域番号 |
22K16989
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
鍵本 慎太郎 横浜市立大学, 附属市民総合医療センター, 助教 (10737480)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 軟骨再生医療 / 3次元バイオプリンター / 皮膚ー再生軟骨複合組織 / 再生軟骨付き皮弁 / 形成外科 |
研究実績の概要 |
体表変形疾患に対する形成外科治療として、再生医療技術を用いた軟骨再生医療は期待を集めている。しかしin vitroで形態や量、力学的強度を有した再生軟骨の作製に課題があり、臨床利用は現状広まっていない。また再生軟骨組織は皮膚で被覆される必要があるにも関わらず、皮膚付き再生軟骨の開発は未だされていない。 そのため、申請者はin vivoで再生軟骨を成熟させ、かつ皮膚と再生軟骨を結合させ移植する『皮膚-再生軟骨複合組織移植術』を考案し、研究を立案した。『皮膚-再生軟骨複合組織』は従来再建手術で利用されている血管柄付き皮弁に、3次元バイオプリンターを用いオーダーメイド軟骨を付加し作製する新規手法である。本研究はヒトへの臨床応用を目的に施行し、基礎研究と前臨床研究を施行する予定である。本手法を臨床応用することは、低侵襲かつ簡便な広範囲整容的再建や、小耳症など小児の先天奇形の早期治療を可能とするため、従来の治療法を大きく替えるパラダイムシフトとなりうる。 本研究では、まず基礎研究として3次元バイオプリンターを用いて任意形状を持つ軟骨様組織の作製を目指した。さらに作製した3次元再生軟骨から皮膚―再生軟骨複合組織を作製し、その臨床応用の可能性につき検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究計画調書に沿って下記の研究を施行した。 Ⅰ. In Vitroでの軟骨組織再構築法の確立のため、①バイオインクの検討:軟骨細胞とバイオインクを混合し、細胞障害性とプリンタビリティを評価し、以後の研究で利用するバイオインクを2種類に絞った。②3次元バイオプリンターを用いた再生軟骨作製法の検討①で選定したバイオインクを用いて3次元プリントを行った。プリント速度調整や架橋による強度補充法を併用することで、任意形態の作製に成功した。 Ⅱ.皮膚-再生軟骨複合組織作製法の検討のため、③免疫不全ラットを用いた皮膚-再生軟骨複合組織作製法の検討:②で作製した3次元再生軟骨を免疫不全ラット(N=12)の皮下に移植した。移植組織の大きさや形態、また移植部位に対して条件検討し、いずれの方法でも皮膚―再生軟骨複合組織をすることができた。④免疫不全マウスを用いた皮膚-再生軟骨複合組織移植法の検討:③の後に皮膚-再生軟骨複合組織を血管柄付きで皮弁挙上し別部位へ移植した。有茎皮弁、遊離皮弁両モデルを作成した(N=8)ところ全例において感染、周術期死亡などの合併症は認めなかった。またいずれの術式においても臨床的、また画像的に術後に皮膚―再生軟骨複合組織が維持できることを確認した。術後2か月で移植組織を回収し、現在採取組織を評価検討中である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は下記の3点を主に計画しており、残り期間で十分実施可能と考えている。 1)本研究結果のまとめ:採取検体の組織画像解析、数値データの統計学的処理を行い、研究結果をまとめる。 2)国際学会での学会発表:本研究において得られた新たな知見を国際学会で発表する。現時点で2023年8月に開催予定の世界マイクロサージェリー学会(WSRM)にて研究成果を発表予定である。 3)論文報告:本研究において得られた知見を欧文学術誌に投稿する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度以降も研究が継続するため、少額の研究残金が生じたが次年度持越しとした。残金は次年度研究費と合わせて人件費や旅費、論文構成費として使用予定である。
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