研究課題
近年、加齢による唾液腺機能低下に伴い、唾液減少、唾液成分変化による口腔乾燥症(ドライマウス)が生じることが報告されている。唾液減少は、著しいQOL低下をもたらすことか ら、唾液腺の機能回復を支持する治療法の開発が期待されている。しかし、口腔乾燥症の病態のみならず、唾液腺の恒常性変容機構について、未だ詳細は明らかにされていない。本研究課題は、幼若マウスと老齢マウスの顎下腺を用いたmiRNA-mRNA網羅的統合解析の結果によって、唾液腺老化に関わる因子(miR486-5pと、その下流遺伝子 Id4(Inhibitor of differentiation 4))として同定している各分子、およびその制御遺伝子について分子基盤を追究することを目的として遂行している。初年度には、まず個体レベルで、野生型マウスに見られる正常な分化・増殖過程におけるId4の時間空間的発現パターンについて、Id4欠損マウスでどのような異常をきたしているのか、各種分化マー カーを用いた組織学的解析を行った。また、初代マウス顎下腺細胞を用いた2次元および3次元培養法を用いた実験で、組織学的データの検証を行った。さらに、(安静時唾液は採取困難であるため)ピロカルピン刺激による唾液を採取し、野生型マウスとId4欠損マウスの唾液の量・性状の相違について、生化学的に解析した。続いて、in vitro初代細胞培養系で、Id4の標的分子(bHLH型転写因子)Xの同定と機能解析を進めており、得られた結果について、生体内でも反映されているか、組織学的や3次元細胞培養にて検証を開始した。
2: おおむね順調に進展している
当初の予定通り、順調に進捗している。
引き続き、唾液腺におけるId4の標的転写因子、およびその下流遺伝子の同定を行い、唾液腺におけるId4の生理的意義、特に唾 液腺の分化・老化機構と恒常性維持におけるId4の役割について、その分子基盤を追究する。
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Biochim Biophys Acta Mol Cell Res
巻: 1870(2) ページ: 119404
10.1016/j.bbamcr.2022.119404