研究課題/領域番号 |
22K17004
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
山口 優 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 助教 (50823308)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | Rab44 / Rab GTPase / Coro1c / Rab44ノックアウトマウス / 骨組織・骨代謝解析 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、Rab44の欠失が骨粗鬆症モデルへ与える影響を調べ、その機能を明らかにすることである。研究代表者はRab44 の遺伝子異常が骨粗鬆症に関与するのではないかと考え、本遺伝子ノックアウトマウスに以下の環境因子を加えて骨粗鬆症モデルを作製し解析する。食事環境に関してはカルシウム欠乏食モデル、性ホルモン異常に関しては卵巣摘出(OVX)モデル、薬物療法に関してはステロイド投与などの薬物投与モデル、運動の影響に関して尾部懸垂モデルを作製する。また、in vitroでのCoro1cとの相互機能に対する実験を行うことにより、その分子メカニズムも解明する。 質量分析の結果、Rab44がアクチン結合タンパク質であるCoronin1Cと相互作用することを見出した。免疫沈降実験ではCoro1cとの結合はRab44の野生型と不活性型(GDP型)変異体発現細胞で起こり、Rab44の活性型(GTP型)変異体発現細胞では起こらないことが明らかになった。これらの知見と一致するように、GTP型変異体の発現は破骨細胞の分化を抑制し、GDP型変異体の発現は分化を促進することがわかった。Coro1cノックダウン実験では、破骨細胞は顕著に多核形成が阻害されていた。さらに、Coro1cノックダウンにより、RAW-Dマクロファージの運動能と遊走能が阻害された。in vivoの実験系でもCoro1cノックダウンが破骨細胞形成を抑制することが明らかになった。従って、Coro1cノックダウン細胞において破骨細胞の細胞形成と融合が減少するのは、マクロファージの運動性が減少したことに起因している可能性が考えられた。以上の結果から、Coro1cはGDP特異的Rab44エフェクターでありマクロファージの細胞運動を調節することで破骨細胞形成を制御することが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Rab44結合するタンパク質であるCoro1cに関しては現在までにその機能を解明し、論文報告を行なった。 Rab44遺伝子欠損マウスの解析については、マイクロCT解析を行う匹数を重ねている段階である。また、正常状態における解析に加えて、卵巣摘出マウスの解析についても現在進行中でありマイクロCT解析を行なっている。
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今後の研究の推進方策 |
Rab44遺伝子欠損マウスの表現型解析についてはマウス形態異常を調べるための表現型解析フローチャートに則り、自然状態での観察、刺激に対する反応・反射観察、肉眼内臓解剖による形態異常を解析する。血液の血算検査および生化学的検査においては野生型とRab44ノックアウトマウスの血清および血球数の検査を実施する。血算検査では項目ごとに野生型マウスの正常値を元にヒートマップを作製し、ノックアウトマウスでの異常個体を視覚的に表現する。生化学検査では骨に関連した項目の測定を行う。 Rab44ノックアウトマウスでの骨組織・骨代謝解析については胎生期マウスあるいは生後数日後のマウスの透明骨格標本を作製し全身形態を評価する。アルシアンブルー染色で青色に染まった軟骨組織とアリザリンレッドで赤色に染まった石灰化硬組織の範囲を比較し、マウス個体レベルでの硬骨形成の比較を行う。さらに成長したマウスの大腿骨、椎骨等のマイクロCT撮影により骨量、海綿骨数、海綿骨厚を測定する。同時に、固定後脱灰パラフィン切片や非脱灰樹脂切片を作製し、HE染色、TRAP染色を行い、骨形成を比較する。またカルセインを段階投与し、非脱灰樹脂標本を作製して骨組織の動的状態を評価する。 Rab44ノックアウトマウスを用いた骨粗鬆症モデル実験では卵巣摘出(OVX)モデルを作製しマイクロCTで解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
Rab44遺伝子欠損マウスに関して、実験に十分な匹数を確保できなかったため、次年度使用額が生じた。次年度は胎仔、新生仔を用いて透明骨格標本を作製のための消耗品の購入に充てる。また骨組織切片の作製、及び免疫蛍光染色でRab44ノックアウトによる小胞輸送関連因子(Rab5、Rab7)、破骨細胞活性関連因子(カテプシンK)の局在や量の変動の解析に必要な各種抗体や試薬の購入に充てる。骨粗鬆症病態モデルである卵巣摘出マウスに関しても同様に解析に必要な消耗品の購入を予定している。これらに伴い、実験に用いるマウスの飼育数、飼育期間も増加することになるので、マウス飼育費用にも充てる予定である。
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