研究課題/領域番号 |
22K17011
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
岡野 徳壽 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 助教 (70886663)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | JAK / STAT / inflammasome / Porphyromonas gingivalis |
研究実績の概要 |
本研究では、多発性硬化症(MS)増悪化に関連した歯周炎関連細菌Porphyromonas gingivalis (Pg) 感染によるインフラマソーム活性化メカニズムについて、分子レベルで詳細に解析し、原因となる代謝産物および宿主因子を同定することを目的としている。2022年度はLysM発現マウスおよびHIF1αノックアウトマウスの骨髄由来マクロファージに対して網羅的遺伝子発現解析 (RNA-sequencing) を行い、HIF1α依存的にインフラマソーム活性化を制御するしていると考えられる候補遺伝子をスクリーニングした。その結果自然免疫関連遺伝子の一つであるJAK1/2およびSTAT3の発現量がHIF1α依存的に減少していることを見出した。そこでJAK阻害剤を用いて、Pgによるインフラマソーム活性化を調べたところJAK阻害剤は活性化を亢進させることが判明した。これらの結果を元にJAK遺伝子欠損マウスまたはSTAT3欠損マウス作製、または購入を検討しているところである。 さらに、いくつかの代謝産物について定量実験を行ったところ、HIF1α欠損マクロファージではLysM発現マウスに比べてROSの産生能が減少しており、そのような代謝環境の違いもPgによるインフラマソーム活性化に影響を及ぼすという知見も得られた。さらなる段階としてどのオルガネラ由来のROSがインフラマソーム活性化に重要なのかという点に注目して今後研究を進めていく予定である。また、JAKやSTATがROS産生とどのように関連しているのかという点についても解析していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は当初の予定通りRNA sequencingを用いて低酸素かつHIF1a特異的なインフラマソーム活性化に関する因子であるJAKとSTAT3を見出し、阻害剤を用いた細胞実験もほぼ終了している。また、JAKまたはSTAT3のノックアウトマウスは理研BRCやジャクソン研究所ですでに作製されており、入手までに時間がかからず、比較的早期に動物実験まで行うことが可能であると考えている。 また、Pgによるインフラマソーム活性化に重要な代謝産物であるROSの制御についても着目することができ、こちらについてもさらなる進展が期待できる。細胞全体のROSについて定量を行うことはできたが、細胞小器官別のROSについてはまだ測定できないため、さらなる見当が必要である。 以上の理由から概ね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
今後はまず、スクリーニングにより見出したJAK1/2とSTAT3欠損マウスの購入、および繁殖が必要である。その後それらの系統マウスを用いた細胞実験を行い、次に多発性硬化症モデルを用いて動物レベルでの解析を進めていく予定である。これらの結果をまとめて国際学術誌に投稿も予定している。 また、インフラマソーム活性化を制御しているROSについてもどの細胞小器官が重要なのかという点をさらに解析し、HIF1αの下流の遺伝子を同定したいと考えている。
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