研究課題/領域番号 |
22K17018
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
大谷 昇平 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 助教 (90823336)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 骨肉腫 / Ggct / p53 / Myc |
研究実績の概要 |
Ggct(Gamma-glutamyl cyclotransferase) はγグルタミル回路で機能する新規酵素タンパク質である。Ggctは正常骨芽細胞に比べ、骨肉腫において発現が上昇し、骨肉腫細胞でノックダウンすると、細胞の増殖、遊走能、および浸潤能が抑制されることが報告されている。そこで本研究では、Ggctのノックアウトマウスを作製し、骨肉腫発症におけるGgctの役割をマウス生体レベルで検討を行っている。Ggctが骨肉腫において腫瘍促進因子として機能するのであれば、効果的な骨肉腫治療の実現を目指して、Ggctをターゲットにした創薬、すなわち、Ggctの特異的機能阻害剤の開発が重要になるだろう。 骨芽細胞特異的p53遺伝子欠損マウス(Sp7Cre; p53f/fマウス; 以下OSマウス)は、ほぼ100%の個体がヒト骨肉腫と性状が酷似した骨肉腫を発症するので、ヒト骨肉腫モデルとして確立され広く使用されている。そこで、Ggct遺伝子の欠損により、OSマウスのもつ造腫瘍性がレスキューされるかどうか、検討を開始した。現在、以下のようなマウスラインを各30匹程度用意し、1年以上にわたり観察し、骨肉腫の発症時期、発症頻度、そして寿命を比較している。 1.Sp7Cre; p53f/f (OSマウス) 2.Sp7Cre; p53f/f GgctΔ/Δ or GgctΔ/+ 3.Sp7Cre; p53f/f Ggctf/f or Ggctf/+
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
骨芽細胞特異的p53遺伝子欠損マウス(OSマウス)は、ヒト骨肉腫モデルとして確立され広く使用されている。そこで、Ggct遺伝子の欠損により、OSマウスのもつ造腫瘍性がレスキューされるかどうかを検討した。すなわち、以下のようなマウスラインを各30匹程度用意し、1年以上にわたり観察し、骨肉腫の発症時期、発症頻度、そして寿命を比較した。 1.Sp7Cre; p53f/f (OSマウス)、 2.Sp7Cre; p53f/f GgctΔ/Δ or GgctΔ/+、3.Sp7Cre; p53f/f Ggctf/f or Ggctf/+ その結果、1のマウスに比して2および3のマウスは、有意に骨肉腫の発症時期が遅れ、発症率が低下し、寿命が延長した。予定通りマウスの作出が進み、解析が遂行できている。
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今後の研究の推進方策 |
骨芽細胞特異的p53遺伝子欠損マウス(OSマウス)の骨肉腫発症は、強力な「がん遺伝子」c-Mycの機能に依存していることが、研究代表者らによって明らかにされた。米国NIHのデータベース(TARGET)に登録された86症例の小児骨肉腫患者を解析により、Ggctとc-Mycの間に高い発現相関が確認された。OSマウス由来の骨肉腫細胞においてc-Mycをノックダウンすると、Ggctの発現量が低下した。さらにChIP解析によって、ヒトおよびマウス骨肉腫細胞においてGgctプロモーターへのc-Mycの有意な結合が確認され、Ggctはc-Mycの新規ターゲット遺伝子である可能性が示唆された。 そこで現在は、Ggctプロモーター上のc-Myc結合配列(g-myc)を欠損させたマウスを作出している。g-mycエレメントを、制限酵素配列に置換して欠失させたマウス(g-myc m/mマウス)をもとに、Sp7Cre; p53f/f (OSマウス) vs Sp7Cre; p53f/f g-myc m/mで、骨肉腫の発症時期、発症頻度、そして寿命を比較する予定である。
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