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2022 年度 実施状況報告書

ゲノム編集を用いた口腔バイオフィルム感染症次世代予防法の開発

研究課題

研究課題/領域番号 22K17021
研究機関奥羽大学

研究代表者

眞島 いづみ  奥羽大学, 歯学部, 講師 (60770782)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2026-03-31
キーワード口腔Veillonella / 口腔バイオフィルム初期形成抑制 / フルクトース / 乳酸 / エネルギー代謝経路 / メタボローム解析 / 終末代謝産物解析
研究実績の概要

口腔バイオフィルム初期形成抑制のためのゲノム編集Veillonella株の開発に向け、口腔Veillonellaのエネルギー代謝マップの作製を進めた。具体的には本来の乳酸代謝に加え、近年我々が明らかにした遺伝学的に保存されているフルクトース代謝経路の機能解析を下記の要領で遂行した。
①中間代謝産物のメタボローム(CE-TOFMS)解析
V. atypica標準株を代表株とし、フルクトース、乳酸、及び両者の栄養下におけるそれぞれの増殖菌体細胞を用いて、メタボローム解析を行った。各培養条件において、解糖系に関わる中間代謝産物は全て定量的に同定した。本結果から、Veillonellaがフルクトースをエネルギー源とした際、解糖系の代謝経路に従って各終末代謝産物を産生することが明らかになった。さらに、乳酸やリンゴ酸の産生量が、フルクトースを栄養源とした際に相対的に増加し、両栄養下では培養試験における増殖定常期の延長が認められた。
②終末代謝産物(酢酸、プロピオン酸)の解析
上記栄養下における各増殖段階の培養上清を回収し、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)による終末代謝産物の定性、定量解析を行った。その結果、フルクトース(0.25%)及び乳酸(1%)の両栄養下で定常期まで培養した際、酢酸とプロピオン酸の産生量が最も増加した。さらに乳酸(1%)単独栄養下よりもフルクトース(0.25%)を添加した培地において酢酸の産生量は有意に増加し、プロピオン酸の産生量も増加傾向を示した。その際、増殖定常期における乳酸の消費量も、同栄養下の方が増加傾向を示した。これらの結果から、Veillonellaは両栄養下でエネルギー代謝活性が最大となり、乳酸利用後にフルクトースをエネルギー源として利用することによって、自らのライフスパンの延長を図っている可能性が示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

口腔Veillonellaのエネルギー代謝マップ作製において、遺伝学的解析結果から明らかになったフルクトース代謝経路を、メタボローム解析と培養試験、終末代謝産物解析によって、実際に機能していることを明らかにすることができた。また、フルクトース代謝経路が最も稼働する口腔Veillonellaの培養条件の確立にも成功した。
現在は口腔Veillonellaのフルクトース代謝経路を中心としたエネルギー代謝マップ完成に向けて、各培養条件および増殖段階のフルクトース消費量をGC(ガスクロマトグラフィー)による定性定量解析で進めるにあたり、最適な諸条件の検討を行っている。
さらに、口腔バイオフィルム初期形成抑制のためのゲノム編集Veillonella株作製に向けて、最も適した候補株選定のためにヒト口腔由来Veillonella属細菌未同定株の系統分類も同時に進めている。

今後の研究の推進方策

現在遂行中の各培養条件および増殖段階のフルクトース消費量のGCによる定性定量解析を進め、フルクトース消費量が最大になる培養条件を追認する。その後、乳酸及びフルクトース消費量が共に最大となる培養条件を確定する。さらにフルクトースを栄養源とした際の、ライフスパン延長の実態をプロテオーム解析により検証し、口腔Veillonellaの全エネルギー代謝マップを完成させる。
確定した培養条件を適用し、完成したエネルギー代謝マップを基にVeillonellaゲノム編集株の開発を進める。具体的には、乳酸代謝経路に関わる酵素遺伝子をCRISPRiにより順次Knock downし、最も乳酸消費の抑制効率が高い編集ポイントを決定する。同時にその編集株がフルクトースを栄養源として生育・増殖することを確認する。本編集によりVeillonella属細菌の乳酸消費能を抑制し、エネルギー源をフルクトースにシフトさせることで、口腔バイオフィルム形成開始菌であるStreptococcus属との乳酸依存的共存関係を解消できるVeillonella株を作製、開発する。また実際に作製した乳酸代謝機能抑制Veillonella株とStreptococcus属細菌とのバイオフィルム形成能を確認し、口腔バイオフィルムに依存する感染症予防に応用する方策を確立する。

次年度使用額が生じた理由

GCによる定性定量解析を進めるにあたり、試料の濃縮を行うための備品納品、導入が世界的な半導体不足の事情により遅れた。そのため実験も遅れ、予定していた論文投稿が年度内に間に合わず、オープンアクセス費の支払いとして計上していた分が次年度使用額として生じた。該当費は次年度以降、同様の目的で使用する予定である。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2023 2022 その他

すべて 国際共同研究 (2件) 学会発表 (3件)

  • [国際共同研究] Universitas Indonesia(インドネシア)

    • 国名
      インドネシア
    • 外国機関名
      Universitas Indonesia
  • [国際共同研究] Mahidol University(タイ)

    • 国名
      タイ
    • 外国機関名
      Mahidol University
  • [学会発表] 口腔Veillonellaの新栄養源であるフルクトースの利用2023

    • 著者名/発表者名
      Mashima I, Nakazawa F, Kiyoura Y
    • 学会等名
      第96回日本細菌学会総会
  • [学会発表] 口腔由来Veillonella属細菌新菌種の提案2022

    • 著者名/発表者名
      眞島いづみ、清浦有祐
    • 学会等名
      第71回奥羽大学歯学会学術大会
  • [学会発表] 口腔Veillonellaにおける新栄養源-フルクトース代謝能の評価2022

    • 著者名/発表者名
      眞島いづみ、中澤太、清浦有祐
    • 学会等名
      第64回歯科基礎医学会学術大会

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公開日: 2023-12-25  

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