研究課題
精巧な口腔内細菌叢のバランスが崩れる「口腔内dysbiosis」が起こることは、口腔上皮バリアの破綻を意味し、全身の恒常性の破綻を引き起こすこととなる。歯周病による口腔内dysbiosisは2型糖尿病や肥満と相互に関連することが報告されており、口腔内dysbiosisが代謝に影響を及ぼす可能性が示唆されている。また、歯周病が早産・低体重児出産のリスクとなることは明らかになっているが、歯周病が妊娠中の母親の糖・脂質代謝にどのように影響するか、また、その子どもの成長発育にどのように影響するかを、メカニズムまで評価した研究はない。本研究では、ヒトおよび低体重仔出産モデルマウスを用いて、口腔内dysbiosisが、母体の糖・脂質代謝、また出産結果、成長発育に影響するかどうかを明らかにする。口腔内・腸内の細菌叢解析および糖・脂質代謝に重要な臓器である肝臓・骨格筋・脂肪に注目した各臓器での代謝異常を評価し、口腔内dysbiosisを改善することが母体およびその子の健康の基盤となる、というエビデンスを構築する。東京医科歯科大学病院に通院中の妊婦の唾液、および出産後に母乳、子どもの便を採取し、順調に被験者を増加している。また、動物モデルでは、Porphyromonas gingivalisを用いた低体重仔出産モデルマウスを作出し、その仔の成長・発育を評価し、低体重で生まれるものの、成長後に耐糖能異常を呈することを明らかにした。成長後にどの臓器の変化により耐糖能異常を引き起こすかを明らかにするために、肝臓、骨格筋、脂肪を採取し解析を行った。
2: おおむね順調に進展している
臨床研究は順調に被験者を確保している。また、動物モデルでは、母体へのP. gingivalis投与により、仔が耐糖能異常を示すことを明らかにした。
臨床研究は被験者の募集および検体の解析を行う。動物実験では、仔の代謝異常の責任臓器を明らかにする。
本年度集めた妊婦唾液、母乳、子の便のNGSを用いた細菌叢解析を行うため。母親マウスへのP. gingivalis投与によって、仔が耐糖能異常を示すことが明らかになり、今後、責任臓器を明らかにするため、RNA-seqを行うため。
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