慢性リウマチ(RA)患者で血中産生量が増加するタンパク質Leucine-rich alpha-2-glycoprotein 1 (LRG1)は歯周病患者でも高いことが分かっている。本研究では『LRG1が歯周病の病態形成に関与している』と仮説を立て、以下のように1)LRG1の歯周病進行における役割、2)LRG1の歯周病検査マーカーとしての有用性、3)抗LRG1療法の歯周病治療に対する有効性について明らかにしていくことを目的にしている。特にLRG1は創傷治癒の遅延、および血管新生に強く関係している。申請者等はこれまでに歯周病の原因菌であるPorphyromonas gingivalis(Pg)感染とRAの関連メカニズムについて明らかにしてきた。その知見をもとに、in vitro実験系、モデルマウス、患者血清を用いて研究を遂行する。特にRA患者で上昇するLRG1が歯周病増悪に関与することを突き止めることに焦点を当てる。本研究課題の成果から歯周病患者の早期発見、治療を行うことができ、歯周病と関連する全身疾患の発症を抑制できると考えられる。具体的には、実験1)歯肉由来細胞でのLRG1の誘導メカニズムの解明、実験2)歯周炎患者由来血清と歯周炎の炎症面積PISAの相関、実験3)マウス歯周炎モデルにおけるLRG1の産生動態の解析、LRG1の歯槽骨吸収への影響について検討した。その結果、LRG1は培養細胞の実験系で、TGF-betaとの共刺激で炎症性サイトカインIL-6の誘導に影響することによって炎症の惹起に関与していること、患者の歯周炎の程度と血清LRG1量に相関があること、マウス歯周炎モデルで歯周組織でLRG1が誘導されており、破骨細胞活性化に関与していることが明らかとなった。
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