研究課題
歯周炎は細菌感染と宿主の免疫応答の結果、歯槽骨の吸収を引き起こす口腔内疾患である。現在の歯科医療では再生困難な重篤な骨欠損の再生を目標として、間葉系幹細胞と細胞自身が産生した細胞外基質によって構成された細胞集塊(C-MSCs)が考案され、軟骨誘導を施したC-MSCsが骨再生に有効であることが明らかとなっている。本研究では、軟骨誘導C-MSCsによる骨再生の欠点として挙げられる治癒期間の長さの改善を目的として、2022年度より軟骨誘導培地(CIM)と骨分化誘導培地(OIM)を併用して作製したC-MSCsを用いた移植実験を行った。2022年度より引き続き2023年度では、SCIDマウスの頭蓋冠2.3mm欠損モデルへCIMで10日間、その後OIMで7日間培養して作製した骨殻様の構造を持つC-MSCsを移植して骨再生を観察するとともに、移植前の遺伝子発現の解析も並行して行った。その結果、CIMで17日培養して作製したC-MSCsではIHHやCOL10といった軟骨内骨化後期のマーカーが高発現を認めたが、CIMおよびOIMで作製したC-MSCsではこれらの遺伝子が低発現であり、一方で骨分化マーカーが有意に上昇していた。そのため、CIMとOIMの併用によって移植前に軟骨内骨化による骨化が促進されたと考えられる。また移植実験の結果より、CIMのみで作製したC-MSCsと比較して、CIMとOIMを併用したC-MSCsでは、明らかに骨再生が誘導されていることが観察された。さらに回収した骨の組織学的解析により、骨欠損断端部と再生骨との間に骨細胞の細胞ネットワークが形成されていることも明らかとなった。以上より本研究によって、CIMとOIMを用いて作製したC-MSCsが軟骨内骨化によって骨再生を誘導し、かつCIMのみで作製したC-MSCsより短期間で再生効果が得られることが示された。
すべて 2023
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (3件)
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