研究課題/領域番号 |
22K17063
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
樋口 賀奈子 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(歯学系), 客員研究員 (40892394)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 歯周病 / 糖尿病 / インフラマソーム |
研究実績の概要 |
歯周病と糖尿病は互いの病状に悪影響を及ぼすことが知られているが、その因果関係の理解には、両疾患に共通の増悪因子を解明することは必須である。歯周病も糖尿病もその発症と進行に、炎症性サイトカインIL-1βとその産生を制御するNLRP3インフラマソームという自然炎症経路が関与していることが知られている。しかし、NLRP3インフラマソームが両疾患の病態に共通の増悪因子として関与しているかどうかは明らかにされていない。本研究では、歯周病患者の治療前後の歯周組織の炎症状態とインフラマソームプライミング状態、糖尿病の指標(HbA1c)の関連性を解析し、両疾患の増悪因子としてのNLRP3インフラマソームの関与について検討する。 長崎大学病院歯科保存治療室に来院したStageII以上の初診の歯周病患者10名を対象とし、歯周治療を実施した。歯周治療前および治療後1か月・6か月メインテナンス時に末梢血7mLを採血した。末梢血単核球からRNAを抽出し、RT-PCR法でIL-1βやインフラマソーム構成因子であるNLRP3、ASC、caspase-1 mRNAの発現量を測定した。末梢血単核球をNLRP3刺激因子として知られるATP(アデノシン三リン酸)で刺激し、IL-1β産生量をELISA法で測定した。これらの測定結果を、末梢血単核球のNLRP3インフラマソームプライミング状態の指標とした。また、歯周ポケット、プロービング時の出血、クリニカルアタッチメントレベル、根分岐部病変、動揺度、プラーク付着率などの歯周組織検査を行った。糖尿病の指標として、 HbA1cを測定した。今後、症例数を増やして歯周治療前療後での歯周病および糖尿病の状態と末梢血単核球のNLRP3インフラマソームプライミング状態を解析することにより、NLRP3インフラマソームが歯周病および糖尿病の病態に与える影響を解析する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
長崎大学病院歯科保存治療室に来院したStageII以上の初診の歯周病患者10名を対象とし、歯周治療を実施した。歯周治療前および治療後1か月・6か月メインテナンス時に末梢血7mLを採血した。末梢血単核球からRNAを抽出し、RT-PCR法でIL-1βやインフラマソーム構成因子であるNLRP3、ASC、caspase-1 mRNAの発現量を測定した。末梢血単核球をNLRP3刺激因子として知られるATP(アデノシン三リン酸)で刺激し、IL-1β産生量をELISA法で測定した。これらの測定結果を、末梢血単核球のNLRP3インフラマソームプライミング状態の指標とした。また、歯周ポケット、プロービング時の出血、クリニカルアタッチメントレベル、根分岐部病変、動揺度、プラーク付着率などの歯周組織検査を行った。糖尿病の指標として、 HbA1cを測定した。 これらの測定結果から、(1)歯周病重症度および糖尿病の指標の変化、(2)歯周病と末梢血単核球のNLRP3インフラマソームプライミング状態の関連、(3)糖尿病と末梢血単核球のNLRP3インフラマソームプライミング状態の関連を検討することができるため、症例数は今後増やす必要があるものの、1年目の進捗状況としては、概ね予定通り進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
令和5年度も、長崎大学病院歯科保存治療室に来院したStageII以上の初診の歯周病患者を対象とし、歯周治療を実施する。歯周治療前および治療後1か月・6か月メインテナンス時に末梢血7mLを採血する。末梢血単核球からRNAを抽出し、RT-PCR法でIL-1βやインフラマソーム構成因子NLRP3、ASC、caspase-1 mRNAの発現量を測定する。末梢血単核球をNLRP3刺激因子ATPで刺激し、IL-1β産生量をELISA法で測定する。これらの測定結果を、末梢血単核球のNLRP3インフラマソームプライミング状態の指標とする。また、歯周ポケット、プロービング時の出血、クリニカルアタッチメントレベル、根分岐部病変、動揺度、プラーク付着率などの歯周組織検査を行う。糖尿病の指標として、 HbA1cを測定する。これらの測定結果から、以下の3点について解析する。(1)歯周病重症度および糖尿病の指標の変化:歯周治療が効果的であれば、歯周組織検査において歯周病重症度の軽減がみられるはずである。また歯周治療は糖尿病の病状改善に関与するため、歯周治療後にHbA1cが減少することが予想される。(2)歯周病と末梢血単核球のNLRP3インフラマソームプライミング状態の関連:初診時の歯周組織の状態と末梢血単核球のNLRP3インフラマソームプライミング状態に相関関係があれば、NLRP3インフラマソームが歯周病の病状に影響を与えていることが示唆される。(3)糖尿病と末梢血単核球のNLRP3インフラマソームプライミング状態の関連:初診時のHbA1cとNLRP3インフラマ ソームプライミング状態に相関関係があれば、NLRP3インフラマソームが糖尿病の病状に影響を与えていることが示唆される。 この研究が予想通りに進めば、NLRP3インフラマソームを介した歯周病と糖尿病との関連が明らかになることが期待される。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和4年度は、長崎大学病院歯科保存治療室に来院したStageII以上の初診の歯周病患者10名を対象に歯周治療を実施した。歯周治療前および治療後1か月・6か月メインテナンス時に末梢血7mLを採血した。末梢血単核球からRNAを抽出し、RT-PCR法でIL-1βやインフラマソーム構成因子であるNLRP3、ASC、caspase-1 mRNAの発現量を測定した。末梢血単核球をNLRP3刺激因子として知られるATP(アデノシン三リン酸)で刺激し、IL-1β産生量をELISA法で測定した。これは、当初の予定よりは、少ない慢性歯周炎患者を対象とした解析であるが、令和4年度は、新型コロナウイルス感染症が拡大しており、初診患者が減少したことと、外来患者の診療制限が行われたことが影響している。解析した患者数が少なかったため、検査数も減少し、解析のために予定していた物品の購入費も減少した。また、令和4年度は、調査研究のために予定していた国内および国外での学会への参加も、現地開催が制限され、この期間の旅費が減少した。これらの原因から、次年度使用額が生じた。 令和5年度は、慢性歯周炎患者を対象とした解析を目標数に近づけるために研究を継続し、そのために必要な実験器具の購入費が必要となる。また、現地開催が可能となった学会の旅費にも充てる予定である。
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