研究課題/領域番号 |
22K17065
|
研究機関 | 埼玉医科大学 |
研究代表者 |
磯崎 祐太 埼玉医科大学, 医学部, 研究医員 (60828218)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | GE1細胞 / IL-17 / CXCL1 / ropinirole / D2様受容体 / carrageenan / 歯周病 |
研究実績の概要 |
(1)In vitro実験系でのropiniroleの抗炎症作用の解析 マウス歯肉上皮細胞株GE1細胞を用いた。carrageenanおよびIL-17A刺激によるGE1細胞のCXCL1、IL-17receptor A(IL-17RA)発現について検討した。定量PCRにおいてcarrageenanはCXCL1、IL-17RA発現を上昇させ、IL-17A刺激ではGE1細胞のCXCL1発現のみ上昇した。次にropiniroleがGE1細胞のCXCL1、IL-17RAの発現上昇を抑制するかを検討した。定量PCRおよびELISAにおいて、ropiniroleはIL-17A共存に関わらずCXCL1、IL-17RA発現を低下させた。 (2)歯周病モデルラットにおける組織学的評価および歯槽骨吸収の評価 対照群はPBS群、実験群はcarrageenan(CA群)とcarrageenanにropinirole(CA/RP群)を浸漬した絹糸を用いた群とした。3種混合麻酔(medetomidine hydrochloride、midazolam、butorphanol)をWistarラットに腹腔内投与した。麻酔下にてラットの上顎第一~第三臼歯口蓋側歯肉を#12メスで歯肉溝切開、剥離子で歯肉弁を剥離し、上記絹糸を上顎第二臼歯周囲に挿入した。週1回絹糸を交換し、4週間後にsodium pentobarbitalにて安楽死させ、採取した上顎第二臼歯口蓋側歯肉を4%PFA固定、顎骨を70%EtOH固定した。歯肉組織をHE染色にて評価し、CA群ではPBS群と比較してリンパ球や好中球の浸潤を認めたが、CA/RP群では抑制された。次にμCTを用いて、両側上顎第二臼歯口蓋側中央部のCEJ~歯槽骨頂の垂直距離を測定すると、CA群と比較してPBS群では垂直距離が長かったが、CA/RP群では短くなっていた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
In vitro実験系でのropiniroleの抗炎症作用の解析においては、RT-PCRおよびELISAにおいて、ropiniroleがGE1細胞に作用してIL-17RA発現を抑制し、炎症性サイトカインであるCXCL1産生を抑制することを明らかにした。また、歯周病モデルラットにおいては、HE染色およびμCTにおいて、ropiniroleが歯肉組織の炎症および歯槽骨吸収を抑制することを明らかにした。これらの研究結果をまとめて、Experimental and Therapeutic Medicineへの英語論文の投稿も行い、2022年12月29日にacceptを受理することできた。
|
今後の研究の推進方策 |
2022年度はIn vivo実験系において、歯周病モデルラットの歯肉組織のHE染色を行い、炎症性細胞浸潤の組織学的評価は行ったが、免疫染色などを用いた各炎症性サイトカイン(IL-17, CXCL1など)についての免疫組織学的評価は行っていないため、実験計画を立てていきたい。また、In vitro実験系においては、GE1細胞をλ-carrageenan、IL-17A、ropiniroleを添加し、RT-PCRでCXCL1およびIL-17RAの遺伝子発現、ELISAでCXCL1産生について調べたが、今後は細胞質と核のタンパク質を分離して抽出し、NF-kBの核内移行をwestern blottingにて調べるIn vitro実験系も計画して行っていきたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
実験で使用する機材および試薬については、大学内の他の研究室より借りることができたことや他の研究室との共同研究を行うことができたことなどが理由で当初予定していた経費を節約することができた。今後は、D2様受容体アゴニストが好中球性炎症を抑制するメカニズムについて更に追及いくため、今後の研究の推進方針にも記載したwestern blottingや免疫染色等の研究や、ropinirole以外のD2様アゴニストを使用した実験や、歯周病患者の血液や細胞を用いたより臨床的な実験も予定しており、そのための機材および試薬を購入予定である。
|