根尖性歯周炎におけるサイトカインストームに関連するバイオマーカーを特定することで、局所炎症に対する新たな抗炎症アプローチを構築することを目的とする研究を行った。具体的な研究計画として、歯根尖切除術の際に摘出されたヒト根尖病変を採取し、炎症動態解析および多重免疫蛍光染色による組織学的解析を実施した。結果として、病変サンプルからの炎症性細胞の単離培養プロトコルが確立され安定した細胞の採取を行うことに成功した。しかしながら、単離培養した細胞からRNA抽出および cDNA合成を行うプロトコルに問題が生じたことで主たる臨床研究の開始時期に遅れが生じた。具体的には、壊死細胞を多く含む局所炎症環境であった点と線維性変化を伴う慢性病変であることから細胞外マトリックスによる生細胞の回収阻害が生じた点を考慮し、コラゲナーゼ処理効率を上げる(複数種の酵素をカクテルし至適濃度を調整した上でisolationを行った)ことで生細胞の回収率を底上げし解決に至った。これらのプロトコルが確立された後、直ちにヒト検体を使用した臨床研究のスケジュールの組み直しを改めて行い、検証完了かつ論文投稿できる実験系を再構成して倫理審査の変更手続きを行った。しかしながら、予定されていた倫理審査が想像以上に難航し、再考した実験系に重大な支障が出じた(実験対象が条件設定した手術により摘出したヒトPrimary cellであり、サンプリング日程が全て定められていたが、それまでに倫理審査の変更申請が通過できない状況となった)。結果として、任期内に本臨床研究のスケジュールの見通しが立たないことから、実験系の廃止決定に至った。研究過程で得られた抗炎症療法の基礎となる術式に関する検証結果(“上顎第一大臼歯の髄室開拡において致命的な偶発症をもたらす2次元ユークリッド空間の検証”)については内容を取りまとめて学会発表を行った。
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