研究課題/領域番号 |
22K17070
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
泉田 一賢 東北大学, 歯学研究科, 非常勤講師 (70803617)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | PJD法 / フッ素化アパタイト / 周術期口腔管理 / 放射線性齲蝕 |
研究実績の概要 |
常温常圧下で歯の主成分であるハイドロキシアパタイトを接着性材料を介することなく直接的に歯の表面に成膜するPJD(パウダージェットデポジション)法を応用したものである。ハイドロキシアパタイト自体には齲蝕の予防効果は期待できない。そこで、ハイドロキシアパタイト粒子合成過程でフッ化物イオンを導入することにより、フッ素徐放性を有するフッ素化アパタイト(FHA)粒子の合成を検討した。現在、十分に齲蝕予防効果を発揮できるフッ素化アパタイト(FHA)粒子の合成が可能である。 周術期の口腔管理において放射線治療の副作用として放射線性齲蝕が挙げられる。放射線性齲蝕は歯根面に多発する齲蝕であり、一般的な修復処置では治療が困難な症例が多い。修復処置に用いられるコンポジットレジンは接着性材料(ボンディング材)を介して充填されるが、放射線性齲蝕に対してはタンパク質の変性といった歯の内部構造の変化が生じており十分な接着力が期待できず齲蝕の再発が多くなる。そこで、PJD法を応用して放射線性齲蝕歯に対してFHA成膜を行うことで、齲蝕予防効果も期待できる革新的な放射線性齲蝕治療法になり得ると考えた。 現在までに、ヒト抜去歯に対して25Gyの照射を行うことで、臨床的ながん放射線治療を模倣した被ばく量であることを検証した。In Vitroで使用する放射線性齲蝕を有する抜去歯の生成に成功した。FHA粒子の成膜方法および噴射条件は、「若手研究18KK170943」にて既に確立しており、この条件のもと放射線性齲蝕歯への成膜を実施して機械的、化学特性評価を実施した。耐久性に関しては5℃、55℃のサーマルサイクル試験を実施し、耐酸性に関してはpHサイクル試験を実施した。放射線性齲蝕歯に成膜したFHA膜は、健全なヒト抜去歯に成膜したHA膜、FHA膜(いずれもコントロール群)と比較して同等の耐久性、耐酸性を示すことが検証された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
理由 放射線性齲蝕を模倣したヒト抜去歯の生成が完了でき、機械的特性、化学的特性について検証できたことから、本研究はおおむね順調に進展しているものと判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでの研究結果を整理し、論文投稿を進める。また、臨床試験に向けたプロトコル作成を検討する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
今後、抜去歯の形態学的評価、生化学的評価をさらに進めつつ、得られたデータの整理、論文作成に対しても費用が必要となるため、次年度使用額が生じるものと判断した。
|