研究課題/領域番号 |
22K17076
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
田仲 由希恵 岡山大学, 大学病院, 医員 (20884836)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | E-rhBMP-2 / コンタクトオステオジェネシス / インプラント周囲炎 |
研究実績の概要 |
インプラント周囲炎の治療法として,自家骨を移植する方法が用いられている.この方法では,インプラント体の表面をβ-TCPアブレージョンで完全に除染できていたとしても,骨欠損部の再生は,移植した自家骨を中心に起こり,インプラント表面にはコンタクトオステオジェネシスと呼ばれる骨再生が生じることはまれであるため,オッセオインテグレーションを再度回復することは難しく,時間の経過とともにインプラント体が再感染し,インプラント周囲炎が再発するケースも多い. そこで,インプラント体表面にrhBMP-2を高濃度徐放する機能性材料を応用することでコンタクトオステオジェネシスを促進し,インプラント周囲炎に対する治療法として応用できるのではないかと考え,実験を遂行している.インプラント体表面にrhBMP-2のみを塗布した群 (rhBMP-2群), rhBMP-2を塗布した後に機能性材料とrhBMP-2を混和して塗布した群 (rhBMP-2・機能性材料群)を設定した.また,両群において,塗布後すぐに移植する非洗浄モデルと口腔内という防湿が難しい環境下でもその効果が持続可能かを検討するために,生理食塩水で振動洗浄した後,マウス背部皮下へ移植し2週間で回収する洗浄モデルを作成した. マイクロCTを用いたX線学的解析と研磨切片を作製しHE染色を行い,組織学的解析をおこなった.その結果,非洗浄モデルでは,両群においてインプラント体周囲に骨が形成され,rhBMP-2群のインプラント体周囲に形成された骨体積量は,rhBMP-2・機能性材料群と比較し有意な差はなかった.しかし,洗浄モデルにおいて,rhBMP-2群では,インプラント体周囲にほとんど骨形成が観察されなかったが, rhBMP-2・機能性材料群ではrhBMP-2群と比較し有意にインプラント体周囲に骨形成が誘導された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2024年度,実験に使用予定の1歳以上のビーグルイヌが,十分に日本におらず,購入することかができなかった.そのため,ビーグルイヌを用いた実験が実施できなかった. そのためマウスの背部皮下に移植後,回収までの期間を12週間に延長したモデルを作成しており同様の方法で観察する予定である.
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今後の研究の推進方策 |
2024年度に1歳以上のビーグルイヌを購入することが可能であれば,イヌに埋入したインプラント体をインプラント周囲炎に罹患させ,rhBMP-2付加組織接着剤がコンタクトオステオジェネシスを起こし,骨再生を誘導できるかを自家骨移植等の既存の治療法と比較し検証する. 具体的には,a) インプラント周囲炎モデルを作製する.下顎両側小臼歯4本をすべて抜歯し,2ヶ月間治癒を待った後,インプラント体を埋入する.さらに2ヶ月後に,インプラント体の近遠心に1壁性の骨欠損を作製し,感染を惹起させる.b) インプラント体表面へのE-rhBMP-2付加組織接着剤塗布法を検討する.a)から2週間後に,臨床で行う処置と同様,インプラント体周囲の不良肉芽を掻爬後,表面の汚染を除去するためにβ-TCPアブレーションをした後,rhBMP-2付加組織接着剤を用いてインプラント体表面を処理し,フラップを戻して緊密に縫合する.2,4ヶ月後に組織を回収し,micro-CTを用いた骨形態学的評価及び組織学的評価を行う予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
本来は,令和5年度中に信頼性下非臨床試験に向けイヌインプラント周囲炎モデルに対する実験を開始する予定であったが,使用予定の実験用のビーグルイヌが十分に日本になく,購入することができなかったため,イヌの購入のための費用を次年度に繰り越すこととなった. 繰り越した経費は,2024年度イヌの購入費に使用する予定である.
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