研究課題/領域番号 |
22K17081
|
研究機関 | 朝日大学 |
研究代表者 |
村上 智哉 朝日大学, 歯学部, 非常勤講師 (90791517)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | iPS細胞 / 乳歯歯髄細胞 / マイクロRNA / mirPS細胞 / インスリン分泌細胞 / 抗腫瘍性 / 高効率な初期化 |
研究実績の概要 |
iPS細胞は再生研究において活発な研究が行われている。その作製にあたっては山中因子と呼ばれる4種の初期化遺伝子の遺伝子導入が必要であるが、その遺伝子導入効率は高くなく、また腫瘍形成のリスクが残存している。これらの問題を解決すべく、近年ではマイクロRNA(miRNA)を使用したiPS細胞の作製技術が開発され、注目が大きくなっている。miRNA導入により作製された、iPS細胞様細胞(mirPS細胞)は、従来のiPS細胞に比較してリプログラミング効率が20%程度と高効率であり、更に腫瘍形成能が低いとされている。本研究では、このmiRNAと乳歯歯髄細胞(HDDPC)を用いることでmirPS細胞を樹立し、さらにインスリン分泌細胞の分化誘導を行うことにより、より効率の高く安全な再生療法の開発を目的とする。 まずは、mirPS細胞を作製するために、HDDPCに対してpLOVE-miR302/367(リプログラミングmiRNA)、pT-EGFP(緑蛍光タンパク)、pT-pac(puromycin耐性遺伝子)、pTrans(PB transposase発現ベクター)、をNeon Transfection Systemによって遺伝子導入した。また導入後にpuromycinにて選別して、生じたコロニーを拾い上げて安定株を得た。現在、緑蛍光の確認、ALP染色による未分化性の確認、PCRによるゲノム解析を行っている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、HDDPCに対してマイクロRNAを遺伝子導入することで、mirPS細胞を作製し、さらにインスリン分泌細胞への分化誘導を行うことを目的としている。 現在はmiRNAを遺伝子導入し作製したmirPS細胞に関して、その未分化性や増殖能などについて詳細に解析を行っており、本年度中にはインスリン産生細胞への分化誘導を行っていく予定としている。そのため、期間内の研究完了は問題なく可能であると思われる。
|
今後の研究の推進方策 |
今後、作製したHDDPC-mirPS細胞にの胚葉体形成能や増殖性の維持などの細胞動態について確認を行い、腫瘍形成能に関する検討を行う。また多分化能性を実際に有しているかについて、分化誘導を用いることで脂肪細胞、神経細胞、骨細胞などへの分化が可能であるか確認を行う。 次に膵臓細胞への分化誘導を行う。膵臓分化誘導遺伝子である、pT-NPMTP(NGN3、PDX1、MAFA)、pT-Hyg(hygromycin B薬剤耐性遺伝子)、、pTrans (PB transposase発現ベクター)をHDDPC-mirPS細胞へ遺伝子導入し、さらにhygromycinBにて選別をおこなう。得られたコロニーを拡大して、インスリン産生細胞(insulin-producing cell-committed HDDPC-mirPS、IPC-mirPS)の作成を行う。その後、IPC-mirPSの未分化性やインスリン分泌能について、PCRや免疫染色によって確認を行う予定である。 さらにヌードマウスの膵臓へとIPC-mirPSを移植することによって、生体内におけるインスリン分泌が可能であるか、また腫瘍形成は抑制されているかについて検討を行う予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた研究計画よりも順調に進行しているため、培養試薬、遺伝子解析試薬、生化学分析試薬などに付いて想定よりも少額で済み、多少の残額が生じた。 次年度においては、HDDPC-mirPSのインスリン分泌細胞への誘導やマウスを使用した動物実験を予定しているため、その培養試薬、遺伝子解析試薬や飼育費としての使用計画を立てている。
|