研究課題/領域番号 |
22K17091
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
神尾 尚伸 広島大学, 病院(歯), 歯科診療医 (40911912)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | チタン / プロテオグリカン / オッセオインテグレーション |
研究実績の概要 |
本研究は、骨髄由来間葉系幹細胞(BMSCs)中の目的遺伝子の発現抑制をすることで、オッセオインテグレーションを構成する因子の役割を解明することを目的としている。shRNAはsiRNAと比較して半永久的な遺伝子発現の抑制が可能であり、タイムポイントが長くなる実験系では有用な手法である。デコリン(DCN)は細胞外マトリックスを構成するプロテオグリカンの一種でありオッセオインテグレーションにおいて細胞接着や周囲組織の石灰化に重要な役割を担っていると考えられている。外因性DCNに対して内因性DCNの発現の変化がオッセオインテグレーションに与える影響を分子生物学的に解析した。 BMSCsにDCNのshRNAを導入して作製した細胞(sh-BMSCs)は、DCNの遺伝子発現およびタンパク質の発現を抑制されつつも幹細胞としての特性を有していることを確認した。またコントロールベクターを導入した細胞(N-BMSCs)ではタンパク質レベルで未導入の細胞と発現に差がないことを確認した。 これらの細胞を用いてチタンと細胞との接着界面を電子顕微鏡で観察したところ、N-BMSCsではプロテオグリカン層の形成を確認することができたが、sh-BMSCsでは確認できなかった。また、チタンに接着した細胞の形態にも変化が見られ、石灰化能は著しく低下した。 炎症反応に関する実験では、チタン上で培養したsh-BMSCsの培養上清はヒトマクロファージの遺伝子発現をM1-likeに変化させることを確認し、オッセオインテグレーションにおけるプロテオグリカン層の形成は周囲微小環境の安定性に関与していると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度に作製した細胞を用いて種々の機能実験を行い、成果をまとめたうえで現行の執筆をした。今後英文校正を経て雑誌へ投稿する予定であり当初の計画通り順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では遺伝子発現が抑制された細胞による解析を行ったが、今後の研究ではCRSPR/Cas9等で遺伝子をノックアウトした細胞による実験やノックマウス等を使用したin vivoの実験をすることによりオッセオインテグレーションに必須の因子を同定していくことが期待される。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は作製した細胞を用いて機能解析実験を中心に行った。実験の反復試行回数が最小限に抑えられたこと、また研究室にもともと在庫のあった試薬や他の研究室から試薬等を譲り受けたため研究費の仕様を少額に抑えることができた。今後は論文の投稿費用を除いた資金で次年度の研究へつなげるための追加検証を行う予定である。
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