歯根膜幹細胞を3次元的に培養した歯根膜幹細胞スフェロイドは、歯周組織再生に有効であることが報告されている。しかし、スフェロイドを獲得するまでには時間と工程を要する。そこで、多分化能および組織再生能を維持したままスフェロイドを凍結し長期保存することで、即時入手可能となる環境構築を試みた。 スフェロイド作製用マイクロウェルチップへ歯根膜幹細胞を播種して3日後、マイクロウェルチップ5枚分(細胞数2.0×10^6)の歯根膜幹細胞スフェロイドを回収し、ガラス化法(Vitrification)および緩慢凍結法(Slow freezing)により凍結した。7日(短期)・30日(中期)・90日(長期)の凍結保存後、解凍し、凍結によりスフェロイドの形態および内部細胞が影響を受けるか検討を行った。また、細胞播種12時間後に骨分化培地/脂肪分化培地/軟骨分化培地に交換し、各分化条件で培養したスフェロイドについても、60時間後に多分化能への影響を確認した。 形態はいずれの時点においても凍結前の球状を維持していたが、凍結保存期間が長くなるほど、またガラス化法よりも緩慢凍結法の場合ではアポトーシス細胞の割合が増加することがTUNEL染色により明らかになった。LIVE-DEAD染色よりガラス化法凍結によるスフェロイドでは、緩慢凍結法によるスフェロイドと比べて生存率が向上していた。さらに、リアルタイムPCR法にて多能性マーカー遺伝子の発現を確認したところ、凍結前と概ね変化は見られなかった。骨分化/脂肪分化/軟骨分化についても、指標となる遺伝子発現の変化は凍結前と比べて有意なものではなかった。ただし、いずれの場合においても緩慢凍結法で凍結した場合はガラス化法と比べて発現が減少していた。 これらの結果より、ガラス化法により歯根膜幹細胞スフェロイドの性質を維持した長期保存が実現できる可能性が示唆された。
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