インプラント体の埋入によって口腔粘膜が貫通されることで形成されるインプラント周囲軟 組織は、天然歯の歯周組織と比較して組織学的に脆弱であるため、骨までの炎症波及が早く、インプラント周囲炎が生じやすいとされている。 申請者の研究チームでは網羅的な遺伝子解析法であるマイクロアレイ法を用いて、口腔粘膜組織、歯周組織と比較しインプラント周囲軟組織で特異的に発現する遺伝子を特定している。これらの遺伝子の多くは「炎症」「免疫」に関与しており、特に免疫担当細胞の遊走などに関与するCXCL2はインプラント周囲軟組織に特異的発現する遺伝子であり、ケモカインの一種であるCXCL2がインプラント周囲炎に対してどのような発現変化をするか、また発現制御することによってインプラント周囲炎の予防が可能であるかどうかを明らかにするためにインプラント周囲炎モデルラットの作製を行った。 ラットにチタン製インプラントを埋入し、インプラント周囲軟組織の治癒完了後に歯周病のメカニズムにおける重要な病原性因子であるPorphyromonas gingivalis由来のリポポリサッカライドを3日毎に滴下し、インプラント周囲炎を惹起させる。周囲炎の評価方法として動物実験用マイクロCTや組織標本にて軟組織および硬組織の炎症反応を確認した。 。本研究の成果によって、インプラント周囲炎の予防法が確立されれば、在宅患者のインプラント周囲炎罹患率を減少させることができ、国民の健康に大きく寄与できるものと考える。
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