研究課題/領域番号 |
22K17107
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
大川 純平 新潟大学, 医歯学系, 助教 (10846041)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | レトロネーザルアロマ / 咀嚼 / 嚥下閾 / 肥満 |
研究実績の概要 |
肥満は食習慣によって起こる健康問題である。肥満の治療では「咀嚼法」により、早食いの是正、食品の味わいや満腹感覚の改善による食事の減少が行われる。レトロネーザルアロマは、食品の味わいを決定する主要な嗅覚刺激であり、咀嚼中の食品から放出され鼻腔で感知される香りである。低い嗅覚能力は肥満につながるとされることから、レトロネーザルアロマによる嗅覚刺激の低下は、肥満と関連するのではないかと考えた。また、食品の味わいや嗜好性を変化させることで、早食いや食塊形成を改善できるのではないかと考えた。本研究課題では、レトロネーザルアロマによる咀嚼様相の変化を明らかにし、肥満への影響を調査することを目的としている。 本年度は、嗅覚検査により異常を認めなかった健常成人を対象に測定を行った。被験食品には、規格化された咀嚼機能評価用グミゼリー(UHA味覚糖社製)を用い、香料含有量を、0%、50%、100%、150%(100%が通常のグミゼリー)とした。レトロネーザルアロマの測定には、新コスモス電機社製ニオイセンサを用い、咀嚼機能評価用グミゼリーを自由摂取したときの嚥下閾までの咀嚼回数と咀嚼時間およびレトロネーザルアロマ濃度を測定した。また、100%グミゼリーを用いて咀嚼能率を測定した。 その結果、咀嚼能率が増加するほど、嚥下閾までの咀嚼時間および咀嚼回数は増加した。さらに、香料含有量が増加するに従い、レトロネーザルアロマの濃度も増加し、さらに咀嚼時間も延長した。 以上より、香料含有量を調整し、レトロネーザルアロマを増加させることで咀嚼時間を延長でき、早食いの改善ができる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、嗅覚機能に異常の認めない成人を対象に、咀嚼機能およびレトロネーザルアロマの2つの観点から、咀嚼様相について検討を行った。はじめに、香料の調整による咀嚼機能評価用グミゼリーの物性変化を確認し、大きな変化がないことを確認した。そこで、規格化された咀嚼機能評価用グミゼリーと香料を調整した咀嚼機能評価用グミゼリーとの両方を用い、実験を行った。咀嚼機能による咀嚼様相の変化については研究代表者による過去の報告と同様の結果が確認された。さらに、香料の調整によってレトロネーザルアロマが変化し、さらに香料の増加に伴い咀嚼時間が延長する結果が得られた。以上より、物性が同等の食品であっても、香料含有量を調整することで、レトロネーザルアロマが増加し、咀嚼時間を延長できる可能性が示唆された。 本年度は、肥満を呈する者への測定ついては予備実験にとどまり、追加実験が必要であるものの、被験食品の検討および健常成人における実験は達成され。また、本年度に得られた結果は想定通りのものであった。したがって、課題の研究計画に対しておおむね順調に進んでいると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の結果から、咀嚼機能およびレトロネーザルアロマによる咀嚼様相の変化を検討した。これらは、新規性のあるデータであり、同様の食品であっても香料含有量を調整し、レトロネーザルアロマの動態を変化させることで、咀嚼時間を延長できる可能性が示唆された。また、肥満を呈する者と比較するための条件データとなるものであった。 肥満を呈する者は嗅覚機能の低下や早食いの食習慣を持ちうることが報告されている。次年度は、肥満を呈する者において、レトロネーザルアロマの変化と咀嚼様相とについて検討を行う予定である。また、これまでの研究結果を総括し、結果報告・論文執筆を行っていく予定としている。
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次年度使用額が生じた理由 |
おおむ計画通りに使用したが、新型コロナウイルスの影響により、成果発表および資料収集等が限定され、一部の国内外旅費の計上がされなかった。したがって、残額分は次年度使用予定とした。
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