研究課題
本年度は研究システムの確立、およびプロトコルの立案を行った。予備実験として健常若年者15名(男性7名、女性8名、平均年齢21.8±3.08歳)を対象に,舌の表面筋電図測定を行った。内舌筋の筋活動を測定するために,表面筋電図電極を舌の前方部(舌先から2cm)および舌の後方部(第一大臼歯相当部)に貼付し,舌を最大挙上させ疲労で舌が挙上できなくなるまでの筋活動を記録した。舌の挙上時間を前期・中期・後期に分け,それぞれにおける筋活動量と平均周波数を解析対象とした。その結果,筋活動量ではいずれの解析対象にも有意差はみられなかったが,平均周波数では中期において舌前方部と舌後方部に有意差を認めた。また,平均周波数の変化には山型・直線型・谷型の3パターンが存在し,どのパターンにおいても前期から後期にかけて平均周波数は小さくなる傾向にあるが,舌前方部では山型が最も多く(53%),舌後方部では谷型が最も多く見られ(60%),このようなパターンの違いが中期における舌前方部と舌後方部の周波数変化に影響を及ぼしていると考えられた。一方で、直線型の波形はあまり見られず,舌前方部、舌後方部のどちらも周波数が大きく下がる時期があるということが明らかとなった。健常若年者において舌前方部と後方部の周波数変化の典型的なパターンが明らかになることで,高齢者における加齢変化と比較することが可能となり,舌のリハビリテーションの強度や介入時期を判定する基準となる可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
研究システムを確立し、予備実験によりデータ収集が可能であることが分かった。また、筋電図の周波数変化がパターンに分類できることが判明し、今後の発展に結びつく知見を得ることができたため、順調に進展している。
引き続き口腔機能の低下を電気生理学的観点から明らかにしていく。本実験では、このような周波数変化に影響を及ぼしうる因子(栄養摂取状態、オーラルディアドコキネシス、身体活動量など)をデータに加え、『舌の筋繊維構成に影響を及ぼしうる因子は何か』を明らかにする予定である。
研究を進めていく中で、研究目的を達成するために新たな実験や調査が必要となることが判明したため。使用計画としては、それらを次年度実施するための費用に充当する。
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