補綴装置である義歯は機械的・化学的にも非常に汚れやすい材料であることが事前研究で明らかとなった。つまり、高齢者のQOLをより向上させるためには、簡便で汚れが付着しにくい義歯床用材料の開発が急務である。本申請者はカルシウムドープハイドロキシアパタイトを導入した光触媒チタンを封入した新規義歯床材料を開発し、抗菌性に寄与する可能性の一端を示した。しかし、ハイドロキシアパタイトを義歯床材料に均一にすることが困難であるという問題がある。そこで本申請研究では、有機物の分解や抗菌効果を有し、ナノチューブ構造をもつ酸化チタンを水溶液化し、義歯床用材料に配合し、義歯自体に抗菌効果を示し、強い咬合力に耐えることができる、新規の義歯床用材料の開発を目指し、高齢者のQOLを向上させる一助としたい。各種表面観察により,PMMAで制作した義歯材料表面にTNT成分が含有されていることが確認された。バイオフィルム形成量の評価では対照群と比較してTNTの成分の配合率の向上とともにバイオフィルム形成量が少ないことが確認された。さらに、QCM法によるアパタイト含有QCMセンサ上でのアルブミン付着量の測定により対照群と比較してセンサ表面へのアルブミン付着量が有意に低いことが認められた。以上より義歯床用PMMAレジンへのTNT成分の添加によりタンパク質付着および細菌付着が抑制され、衛生的な新規義歯床用材料として期待できることが示された。
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