研究実績の概要 |
生後2日から37週までの様々な週齢のマウス膝関節組織から単離した初代培養軟骨細胞の遺伝子発現解析で、CCN3 mRNAとともに細胞周期停止因子p21, p53、SASP因子であるIL-6, IL-8 mRNAの発現レベルとマウス週齢との間に強い正の相関を認めた。これはヒト初代培養軟骨細胞でも同様の遺伝子発現と年齢との相関を示した。また、CCN3抗体を用いた1ヶ月から7ヶ月齢のマウス膝関節の免疫染色において、加齢とともに強い染色性が観察された。ヒト初代培養軟骨細胞とラット培養軟骨細胞株RCSに酸化ストレスとしてH2O2を添加し、人工的に細胞老化を誘発したところCCN3 mRNAの有意な発現上昇とともに、p21,p53の発現上昇が認められた。RCS細胞にCCN3を発現ベクターの導入により過剰発現させるとp21プロモータ活性が上昇することに加え、RCS細胞に組換えCCN3蛋白を添加するとp21, p53 mRNAが誘導されことから、CCN3の発現上昇によっても細胞周期停止因子の誘導による老化が誘発されることが明らかとなった。さらに、軟骨組織特異的にCCN3を発現するトランスジェニックマウスの関節軟骨では、早期に関節変性が誘導され、同マウス軟骨細胞では細胞周期停止因子群、SASP因子群の発現が上昇していた。 さらに、健常成人とOA患者から採取した大腿骨頭におけるCCN3の免疫染色では、OA群で軟骨細胞上層部に陽性細胞の集積と軟骨表層の基質での染色性の高い領域を認めた。また、単離した軟骨細胞の遺伝子解析では、健常群に比べOA群でCCN3 mRNAの発現が有意に上昇するとともに、p16やADAMTS4、Aggrecan mRNAなどの発現誘導も認められた。また、同サンプルのMankin scoreによって得られた組織学的変性度と、CCN3 mRNA発現レベルには正の相関を認めた。
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