研究実績の概要 |
慢性の歯周病やインプラント周囲炎の病態が自己免疫疾患の性質を多分に含んでいることが知られるようになったが,炎症が慢性化し,自己破壊が生じるメカ ニズムはいまだ解明されていない. 我々はこれまでに,全身性強皮症などの自己免疫疾患では,炎症性サイトカインストームの中にある内在性間葉系幹細胞 (MSCs)の抗免疫・抗炎症作用が著しく低下するとともに,重篤な骨粗鬆症様症状を呈することを発見し(Akiyama and Chen et al., 2012, 2015),歯周病やイン プラント周囲炎における 歯槽骨破壊の進行も,局所におけるMSCsの機能不全に起因するのではないかと推測した.自己免疫疾患におけるMSCsの免疫調節能の低下 は,継続的な炎症性刺激によって免疫調節能が発揮されなくなる「免疫疲弊」の状態である可能性が強く疑われるものの,炎症性サイトカインがどのようにして MSCsの免疫疲弊を誘発するのか,その分子メカニズムは全く明らかにされていない. MSCsの免疫疲弊を解除し,再度免疫調節能が活性化されれば,炎症による組織破壊を抑制し,組織再生を促進させることになる. そこで本研究では,in vivoやin vitroの炎症性サイトカイン刺激モデルを駆使し,炎症性サイトカインに よるMSCsの免疫疲弊誘導メカニズムを解明する. その免疫疲弊を生物学的に解除することで,歯周病やインプラント周囲炎における免疫トレランス再獲得と組織破壊を抑制する治療法の開発を目指す. MSCs免疫疲弊の分子メカニズムを明らかにするために1型マクロファージの産生する炎症性サイトカインであるTnf-αと共培養した間葉系幹細胞と,共培養しない間葉系幹細胞の遺伝子発現を比較したところ, 共培養した間葉系幹細胞の免疫調節能であるtgfやFasLでの低下が起こることがわかった.
|