超高齢社会を迎えた本邦では,インプラント治療を希望する患者における有病者率は増加傾向にある.中でも骨粗鬆症に罹患している患者では,骨量減少及び骨強度の低下が問題視されており,インプラント周囲骨の吸収が骨粗鬆症罹患患者で有意に増加すること,加えて骨粗鬆症宿主に骨造成を行っても新生骨の形成が低く,成熟骨が有意に少ないことが報告されている.一方,整形外科領域では栄養と骨折リスクとの関連が注目されており,中でも脂溶性ビタミンであるビタミンK2(メナキノン)が骨形成に大きく関与し,骨折リスクを軽減する可能性があることが報告されている.そこで本研究ではビタミンK2が顎骨骨質およびオッセオインテグレーションに対してどのような影響を及ぼすかを明らかにし,口腔インプラント治療への栄養学的アプローチの有効性を検討することを目的とした. まずインプラント術前患者の血中ucOC濃度を測定することによりビタミンKの充足度を明らかにし,さらに下顎第一大臼歯部のCT値とビタミンK充足度との関連を検討した.その結果,インプラント埋入予定患者の1/3以上において基準値より高い血中ucOC濃度を認め、ビタミンKが不足していた.また血中ucOC濃度と下顎第一大臼歯部のCT値には負の相関を認め,ビタミンKの不足が顎骨骨代謝に負の影響を与えている可能性が示唆された. 次いで,ビタミンK2(メナキノン4および7)がラット大腿骨の皮質骨部に与える影響をマイクロCTにて解析した.その結果,メナキノン4と7は皮質骨の空隙割合にはほとんど影響を与えなかった.一方,統計学的に有意ではないものの,メナキノン4と7はいずれも皮質骨幅を増大させる傾向を示した.
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