【対象・方法】治療前の口腔扁平上皮癌(以下,OSCCs)患者を対象とし,早期癌(T1/T2)群および進行癌(T3/T4)群に分け,口腔潜在的悪性疾患患者(以下,OPMDs)および東北圏内大規模バイオバンク機構にて解析している健常者口腔検体を対照群とした.唾液を採取し,細菌ゲノムDNA の抽出,次世代シークエンサーを用いて16SrRNA解析を行った.菌叢解析ソフトウエアを用い,上位の門,綱,目,科,属,種ごとに発現頻度を解析し,組織学的悪性度・臨床的因子・予後などと口腔細菌叢のメタゲノム解析結果の相関を評価した. 【結果】各群合計148名の唾液検体の解析を行った.患者背景に有意差はなかった.進行癌で多様性が増加する傾向にあった(α多様性).病理組織学的にも,臨床的な病期で分けても進行癌では特徴的な菌叢分布の傾向があった(β多様性).Actinobacteriota門,とくにRothia属やActinomyces属は病期や病理学的悪性度が高い症例で有意に構成割合が低かった.Spirochaetia 門やProsteobacteria門の菌叢,とくにTreponema属は進行癌で有意に構成割合が高かった.種としては, P. histicola,T. denticola,A. graevenitzii,T. lecithinolyticum,P. stomatisnaが進行癌で有意に多かった. 【結論】我々は次世代シークエンサーによる口腔細菌叢メタゲノム解析を行い,進行癌では特徴的な菌叢の分布および多様性の増加を示すことを解明した.口腔癌の発症・進展にはActinomycetia門やSpirochaetia門などの口腔細菌叢の変遷が関与している可能性を示した.
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