研究課題
レーザーを活用した光線療法の作用は全身的副作用のリスクが低く、骨疾患や関節炎等に対して一定の治療効果が認められている。薬剤関連顎骨壊死(MRONJ)は、骨吸収抑制薬や血管新生阻害薬の長期投与や癌患者に対する高用量投与下で発症するが、一度発症すると予後が悪く、かつ顎骨切除は患者のQOLを大きく低下させるため、MRONJを発症させない予防法、また侵襲の少ない治療法が求められている。本研究ではMRONJモデルマウスを用いて、光エネルギーによるMRONJ予防/治療効果をトランスクリプトーム解析や16s rRNA遺伝子に基づいた細菌叢解析によって明らかにし、また、初代培養の骨芽細胞、破骨細胞を含む抜歯窩の創傷治癒に関連した細胞への影響を分子生物学的に評価して作用機序のメカニズムを明らかにし、光エネルギーのMRONJ予防/治療への臨床応用を目指す。骨吸収抑制剤であるゾレドロン酸水和液の静脈内投与と、抗悪性腫瘍薬であるシクロホスファミドの腹腔内投与を行い、上顎右側第一臼歯を抜歯した(MR群)。加えて、半数には抜歯窩に対して波長910nmの近赤外線半導体レーザーを複数回照射した(MR-NIR群)。抜歯後14日と35日において、抜歯窩の組織形態計測法による解析およびマイクロCTによる骨構造解析を行った。MR群と比較して、MR-NIR群の開放創率は、抜歯後14日と35日において、有意に減少した。また、マイクロCTを用いた骨構造解析を行なった結果、抜歯後14日と35日において、MR群とNIR群の抜歯窩では薬剤の代わりに生理食塩水を投与したコントロールマウスと比較して、骨治癒の遅延を認めた。しかしながら、抜歯後35日においては、MR群と比較してMR-NIR群の抜歯窩の骨石灰化量が有意に増加した。
2: おおむね順調に進展している
MRONJモデルマウスが作出できた。加えて、抜歯窩の組織形態計測およびマイクロCTによる骨構造解析によって、光エネルギーがMRONJモデルマウスにおいて上皮化および骨治癒を促進することを見出した。
今後は、抜歯窩周囲の軟組織 (歯肉と肉芽組織) および骨組織を採取し、RNA-seq解析による網羅的な遺伝子発現の変化の探索、および16S rRNA遺伝子に基づいた細菌叢解析を行うことによって、光エネルギーがどのように影響するかを明らかにする。
RNA-seqおよび16S rRNA遺伝子に基づいた細菌叢解析を行う予定であったが、サンプル採取のタイムコースを検討しており、前述した解析に用いるサンプルを決定出来なかったため、シーケンス費用を次年度使用とした。
すべて 2022
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