研究課題
レーザーを活用した光線療法の作用は全身的副作用のリスクが低く、骨疾患や関節炎等に対して一定の治療効果が認められている。薬剤関連顎骨壊死(MRONJ)は、骨吸収抑制薬や血管新生阻害薬の長期投与や癌患者に対する高用量投与下で発症するが、一度発症すると予後が悪く、かつ顎骨切除は患者のQOLを大きく低下させるため、MRONJを発症させない予防法、また侵襲の少ない治療法が求められている。本研究ではMRONJモデルマウスを用いて、光エネルギーによるMRONJ予防/治療効果をトランスクリプトーム解析や16s rRNA遺伝子に基づいた細菌叢解析によって明らかにし、また、初代培養の骨芽細胞、破骨細胞を含む抜歯窩の創傷治癒に関連した細胞への影響を分子生物学的に評価して作用機序のメカニズムを明らかにし、光エネルギーのMRONJ予防/治療への臨床応用を目指す。骨吸収抑制剤であるゾレドロン酸水和液の静脈内投与と、抗悪性腫瘍薬であるシクロホスファミドの腹腔内投与を行い、上顎右側第一臼歯を抜歯した(MR群)。加えて、半数には抜歯窩に対して波長910nmの近赤外線半導体レーザーを複数回照射した(MR-NIR群)。抜歯後1週に患部周囲組織を採取し、RNA-seq解析と細菌叢解析を行った。RNA-seq解析より、患部周囲の軟組織ではMR-NIR群において創傷治癒において重要な役割に関連する遺伝子の発現が上昇し、骨形成を抑制する遺伝子の発現が抑制されていることが認められた。一方で、細菌叢は両群間での差はなかった。
3: やや遅れている
光エネルギーがMRONJモデルマウスにおいて上皮化および骨治癒を促進することを見出した。細胞実験において標的細胞の培養条件や光エネルギーの照射条件の検討に時間を要しているため。
今後は骨、歯肉構成細胞に光エネルギーが及ぼす影響と作用機序の解明を行っていく。
動物実験により光エネルギーが影響する標的細胞の絞り込みが行えたが、細胞実験の培養条件や光エネルギーの照射条件の検討に時間が費やされた。次年度は最適な条件を決め、抗体を購入し、作用メカニズムの解明を行う。また研究成果を海外学会にて発表予定している。
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すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
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