器官の形は、細胞群が作った枠組みを元に決定されていく。その枠組み作りは、それぞれの細胞の増殖に差をつけることで達成される。つまり、細胞増殖をonにする部位とoffにする部位の配置と、その増殖方向の制御によって、器官の形は決められていく。複雑な形態をした器官であればあるほど、その配置や増殖方向も複雑となる。細胞増殖活性のonとoffがパッチワークのように配置することに加え、その配置が経時的に変化することで、形づくりは達成されていく。顔面頭蓋は、体の他の部位に比べ、多くの凹凸を有する。つまり、顔面頭蓋は体の中で複雑な細胞増殖活性のonとoffが要求される部位の一つである。しかし、顔面頭蓋における細胞増殖活性の制御メカニズムの多くは明らかとなっていない。顔面を形成する細胞である神経堤由来細胞特異的にβ-Cateninが欠如するマウス(β-Catenin;Wnt1Creマウス)を作成したところ、顔面に無数の突起物が認められた。これは、β-Cateninの欠損により、さまざまな部位で細胞増殖の活性が増加したことを意味しており、通常の顔面発生では、β-Cateninが細胞増殖活性の暴走を抑制していることを示している。本申請は、β-Catenin;Wnt1Creマウスを用いて、顔面頭蓋の形成における細胞増殖のon/offの制御機構を解明することにある。組織学的解析、DAPI染色の3次元構築解析によるchronologicalな解析を行い、突起物の形成時期が胎生10.5日付近とであることが明らかとなった。
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