研究課題/領域番号 |
22K17162
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
比嘉 憂理奈 鹿児島大学, 医歯学域鹿児島大学病院, 助教 (60808343)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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キーワード | リナロール / 自律神経活動 |
研究実績の概要 |
歯科治療時の局所麻酔における針刺入時の疼痛や不安は、自律神経活動の変動を引き起こし、異常高血圧や血管迷走神経反射などの全身的偶発症を発症する可能性がある。申請者はこれまで、抗不安作用があると報告されてきたモノテルペン系化合物の一種であるリナロールに着目し、香気誘発性鎮痛の有用性とそのメカニズムを動物実験で明らかにしてきた。(Yurina H et al,Sci Rep,2021)そこで抗不安作用と鎮痛作用をもつリナロール香気吸入をヒトに応用することができれば、自律神経の急激な変動を予防でき、安全な歯科治療環境の構築ができるのではないかと考えた。本研究では、リナロール香気誘発性鎮痛作用がヒトにおいても有用であるか、リナロールの香気曝露が自律神経の変動に対してどのような影響を与えるか検討することを目的とする。 今年度は、ヒトへの臨床応用の予備実験として雌マウスでも雄マウスと同様にリナロール香気誘発性鎮痛が生じるのか検証を行った。C57BL/6Jの雌マウス(8-11週齢)10匹を用いて機械性疼痛試験であるTail Pincher testを行った。その結果、雌マウスでも雄マウスと同様にリナロール香気誘発性鎮痛が生じることが分かった。また、高齢マウス(17週齢以降)を用いて機械性疼痛試験であるTail Pincher testを行った。その結果、リナロール香気誘発性鎮痛が高齢マウスでも生じることが分かった。以上のことから性差、週齢に関係なくリナロール香気誘発性鎮痛効果が生じることが分かった。現在、鹿児島大学病院倫理審査委員会に申請中であり、健康成人を対象として吸入濃度、吸入条件(リナロールの濃度:30%、50%、100% )を比較検討し、患者の自律神経系・循環動態・心理状態の測定・解析を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、研究を進めることができているため本研究は概ね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
患者での臨床研究を行う前に、健康成人を対象として、リナロール吸入濃度条件の予備的検討を行う。研究開始前にModified Dental Anxiety Scaleを行い、State-Trait Anxiety Inventoryの心理テストと疼痛評価Numerical Rating Scale (NRS)は研究開始前と終了時に行う。被験者をデンタルチェア上に仰臥位にさせ、鼻カニューレを装着し、吸入させるリナロールの濃度を30%、50%、100%と変化させることで自律神経系(交感神経活動の指標:LF/HF、副交感神経活動の指標:HF)・循環動態(血圧、心拍数)や心理状態を比較し、吸入させる濃度条件の検討を行う予定である。 次に、抜歯が必要な20-40歳女性患者40名から脱落症例を除いた患者らをランダムに対照群とリナロール群の2群に割り付け、処置開始前にModified Dental Anxiety Scaleを行い、State-Trait Anxiety Inventoryの心理テストと疼痛評価Numerical Rating Scale (NRS)は処置開始前と終了時に行う。その後両群とも鼻カニューレを装着し、デンタルチェア上に仰臥位になり、脳波・心電リアルタイム解析システムMem calc Makin2(GMS社)を使用し、自律神経系(交感神経活動の指標:LF/HF、副交感神経活動の指標:HF)・循環動態(血圧、心拍数)のパラメータを記録する。リナロール群ではリナロールを吸入させながら局所麻酔を行う。局所麻酔薬はフェリプレシン添加3%プリロカインを使用し、手技によるバラツキを軽減させるために同一の術者が局所麻酔を行う。2群の自律神経系、循環動態、心理状態の生体パラメータを統計学的に比較解析し、局所麻酔中のリナロール吸入が生体へ与える影響を解析予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
香気曝露装置、試薬、自律神経計測を行うために必要な消耗品の購入、並びにデーター解析を行うためのコンピューター購入予定である。
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