研究課題/領域番号 |
22K17169
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
金子 啓介 日本大学, 歯学部, 助教 (90906554)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | Acetylcholine / GABA / Interneuron / Neural circuit / Disinhibition / Consciousness / Anesthetic / Electrophysiology |
研究実績の概要 |
大脳皮質に存在する血管作動性腸管ペプチド(VIP)陽性ニューロンには、コリンアセチルトランスフェラーゼ(ChAT)が発現していることが知られている。過去の研究では、VIP陽性ニューロンが前脳基底部から投射されるアセチルコリンによって活性化され、GABA作動性ニューロンの活動を抑制し、錐体細胞を脱抑制することが示唆されている。しかし、ChAT-VIP陽性ニューロンがアセチルコリンとGABAを共放出する目的や、微小神経回路内でどのように神経調節を行っているかは未だ不明である。これらのメカニズムを解明することは、意識や覚醒状態の維持を理解するために非常に重要であり、脱抑制神経回路において全身麻酔薬がどのように作用しているかを考察するために役立つ可能性がある。 そこで、遺伝子改変ラットを用いてChAT陽性ニューロンとGABA作動性ニューロンを視覚的に弁別しながら、全細胞パッチクランプ記録を行った。ChAT-tdTomatoおよびVGAT-Venusの両方を発現しているChAT-VIP陽性ニューロンから全細胞記録をとり膜特性および発火特性を解析した結果、過去に報告されたVIP単一陽性ニューロンに類似した結果が得られた。 また、ChAT-VIP陽性ニューロンとGABA作動性ニューロンを同時にパッチクランプを行い、GABA作動性の単一抑制性シナプス後電流が観察された。この応答は、GABA受容体を阻害するピクロトキシンと、ムスカリン性アセチルコリン受容体を阻害するアトロピンによって振幅が減少した。一方、ニコチン作動性の電流は観察されなかった。 これらの結果から、ChAT-VIP陽性ニューロンはGABAとアセチルコリンを共放出し、シナプス後細胞のGABA作動性ニューロンに発現しているムスカリン型受容体によって抑制性シナプス伝達が調節されている可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
申請者は本年度から開始する予定であった単一シナプス記録の実験も既に並行して実験を行っている。しかし、本研究では複数パッチクランプ法によりChAT-VIPニューロンとGABA作動性ニューロンの単一シナプスを記録しなければならない。ChAT陽性ニューロンの分布率および同ニューロンからGABA作動性ニューロンへと接続する接続率は非常に低く、難易度が高いことからサンプル数を増加させることにやや時間を要している。また、全身麻酔薬であるプロポフォールを投与されたデータも必要とするため、現在の進行状況に関してはやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
3ヵ月内にコントロール群のサンプル数を増加し、その後はプロポフォール投与群のサンプル採取に取り掛かる。 古い機器の不調が目立つため、メンテナンスや新しい機材の購入も検討しなければならない。
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次年度使用額が生じた理由 |
試薬や記録電極用ガラス管など、共同で使用できるものがあったため、残額が生じた。 残額は不調の機器のメンテナンス費や新しい機器を購入するための物品費として使用する。
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