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2022 年度 実施状況報告書

心理社会的ストレスを起因とした疼痛制御機構の変調解析

研究課題

研究課題/領域番号 22K17170
研究機関日本大学

研究代表者

川崎 詩織  日本大学, 歯学部, 専修研究員 (30876397)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2024-03-31
キーワード慢性疼痛 / ストレス / 心理社会的因子 / 疼痛制御 / 中脳水道周囲灰白質
研究実績の概要

心理社会的ストレスが疼痛制御機構に及ぼす影響を解明し、治療抵抗性慢性疼痛に対する新規治療法の開発を目的として本研究を開始した。本年度遂行した研究内容は、以下の2つである。
一つ目は、社会的敗北ストレスモデルの確立である。動物には、攻撃性および週齢の異なる、Long Evansラット、Wistarラットのペアを用いた。同ラットのペアを一日一回、10分間対峙させた。14日後にストレス曝露群ラットに出現する、うつ症状および、口腔顔面領域疼痛逃避閾値の変化を、強制水泳試験と口ひげ部へのVon Freyテストで評価したところ、ストレス曝露後の、うつ症状は雌雄ともに出現したものの、口腔顔面領域における疼痛閾値の低下は、雌性ラットにより顕著であることが認められた。このことから、心理社会的ストレスが疼痛制御機構に及ぼす変化には、性差が存在すると推測された。社会的敗北ストレスモデル作製について、安定してうつ症状と疼痛閾値の変化を認める個体を作製する条件設定に苦慮したが、試行を繰り返すごとに、精度を増した社会的敗北ストレスモデルの作製条件が確立できた。
二つ目は、作製した社会的敗北ストレスラットの下行疼痛抑制経路における神経活動に変化が生じているか、免疫組織学的解析方法と電気生理学的解析方法を用いて評価を行った。健常群と比較した際に、ストレス曝露群の中脳水道周囲灰白質では、アストロサイトやミクログリアといったグリア細胞および神経細胞の活性化状態に変化が生じていた。更にストレス曝露群のラットから、中脳水道周囲灰白質を含む急性脳スライス標本を作製しホールセル・パッチ記録を行った。興奮性入力を評価するためにminiature EPSC:mEPSCを記録しており変化の傾向を掴みつつある。今後は、抑制性入力の評価のために、miniature IPSC:mIPSCの記録を行い解析していく予定である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

当初の計画における実施スケジュールでの達成目標は、(1)中脳水道周囲灰白質内における局所神経回路におけるシナプス伝達特性と薬物反応性の検索と(2)内側前頭前野からの投射神経のオプトジェネティクス法を用いた選択的活性化による中脳水道周囲灰白質の神経応答解析であった。(1)に関しては令和3年度から行った先行実験と令和4年度の前半で中脳水道周囲灰白質腹外側部に存在するコリン作動性神経細胞がムスカリン受容体を介した自己興奮制御機構を有していることを、論文発表した。しかし、(2)に関しては、社会性敗北ストレスモデルの確立が最優先事項と考えられたため、令和5年度に実施することとした。

今後の研究の推進方策

令和4年度に社会的敗北ストレスモデルの確立と、中脳水道周囲灰白質における神経活動の変化についての検索を、ある程度進めることが出来た。そこで令和5年度からは、実際に社会性敗北ストレスモデルの内側前頭前野にチャネルロドプシン2(ChR2)を発現させ、中脳水道周囲灰白質におけるシナプス伝達特性に、内側前頭前野からの入力がどのように関与しているのかについて、研究を引き続き行っていく予定である。また、最終的には中脳水道周囲灰白質からの出力神経の活動の変化についても検索していく方針である。

次年度使用額が生じた理由

令和3年1月の校舎移転に伴い、動物飼育施設及び動物実験室が閉鎖された。また本研究に使用予定であった、遺伝子組み換え動物の移転先での繁殖に時間を要したため、研究開始時期が遅れてしまったため、残金が生じた。次年度は、繰越金と令和5年度分の研究費を併せて使用し実験を行う予定である。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2022

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)

  • [雑誌論文] Neural Subtype-dependent Cholinergic Modulation of Neural Activities by Activation of Muscarinic 2 Receptors and G Protein-activated Inwardly Rectifying Potassium Channel in Rat Periaqueductal Gray Neurons2022

    • 著者名/発表者名
      Sugawara S, Nakaya Y, Matsumura S, Hirose K, Saito Y, Kaneko R, Kobayashi M.
    • 雑誌名

      Neuroscience

      巻: 506 ページ: 1-13

    • DOI

      10.1016/j.neuroscience.2022.10.012. Epub 2022 Oct 18.

    • 査読あり

URL: 

公開日: 2023-12-25  

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