研究課題/領域番号 |
22K17185
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
石田 陽子 広島大学, 病院(歯), 歯科診療医 (00772055)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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キーワード | 口腔粘膜上皮細胞 / 酸化ストレス / 炎症性サイトカイン |
研究実績の概要 |
口腔カンジダ症は口腔常在菌であるCandida属のCandida albicans(C.albicans)によって惹起される日和見感染症である。C.albicansは口腔粘膜に付着し、粘膜を障害する性質を持っている。これに対し、口腔粘膜はC.albicansを認識し何らかのストレス応答を行っている事が考えらえる。一方で、Heme oxygenase-1(HO-1)はストレス応答蛋白として報告され、様々なストレスによって誘導され、炎症の抑制に機能する事が報告されているが、不明な点がおおい。 これまでに、口腔粘膜上皮細胞におけるHO-1の発現と機能については報告されておらず、申請者のグループは今まで、口腔粘膜上皮細胞、歯肉線維芽細胞、顎関節骨膜細胞、唾液腺上皮細胞などを口腔組織から樹立し、炎症性サイトカインの刺激による受容体、シグナル伝達、発現誘導される遺伝子の同定を行ってきており、申請者は、口腔粘膜上皮細胞にC.albicansが感染した際のストレス応答機構としてHO-1が特異的に誘導されることを証明している。HO-1は炎症性サイトカインや細菌構成成分によって誘導される炎症性遺伝子の発現を制御している事が報告されている。申請者らの研究グループは、口腔粘膜上皮細胞にC.albicans生菌を添加する事で様々な炎症性サイトカインの発現が誘導される事、中でもIL-8の発現が最も誘導される事を証明した。また、C.alwbicansの構成成分であるβ-glucanを介してHO-1が発現誘導される結果を得た。今後はHO-1がC.albicansで誘導されるIL-8の発現を制御している可能性を検討し、酸化ストレスとHO-1やIL-8の関与を明らかにすることで、口腔カンジダ症だけでなく、他の口腔粘膜炎症性疾患における治療や検査へ応用する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
口腔粘膜上皮細胞においてC.albicansが付着した際に認識する特異的受容体を解明するため、不死化口腔粘膜上皮細胞(RT7)を用いて様々な受容体や細胞接着因子のsiRNAによるノックダウン細胞を作製しHO-1の発現誘導をReal-time PCR法やWestern Blotting法を用いて検討した。ノックダウン細胞を用いることでHO-1の発現誘導が抑制された。RT7におけるHO-1の制御能力を検討するため、RT7においてHO-1を恒常的に過剰発現する株を非ウイルスベクターを用いて作成を行った。作成した細胞の遺伝子配列の確認とウイルスベクターへの導入を繰り返し、遺伝子配列の確認を行っている。以上の結果を得ており,現在のところ実験計画は概ね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
本年度行った研究より得られた結果をより確固とするため、引き続きHO-1を恒常的に過剰発現する株を作成し、HO-1の発現誘導を検討する。口腔粘膜上皮細胞において、C.albicansが付着した際に認識する特異的受容体を解明する。その後、口腔粘膜炎症性疾患罹患患者における組織サンプルを用いてHO-1の発現誘導を確認する。
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次年度使用額が生じた理由 |
タンパク解析、遺伝子の同定に時間がかかっているため次年度使用額が生じた。次年度で以降の助成金を合わせ、物品費として使用することを検討している。
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