研究課題/領域番号 |
22K17187
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
平山 真弓 熊本大学, 国際先端医学研究機構, 特別研究員 (40876364)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 口腔がん / R-loop / RNA修飾 |
研究実績の概要 |
DNAやヒストンがメチル化などの化学修飾により遺伝子の発現を制御する「エピジェネティクス」の概念に加え、RNAも同様に化学修飾を受けることで様々な細胞内プロセスを制御することが明らかになり、「エピトランスクリプトミクス」の概念が定着しつつある。近年、「R-loop」を構成するRNAがN6-メチルアデノシン修飾(m6A)修飾を受けることでR-loopの形成やDNA損傷時の相同組換え修復に関与していることが報告された。R-loopは、転写の過程において、新生されたRNAが鋳型DNAとハイブリッドを形成し、DNA:RNA二重鎖と一本鎖DNAの三本鎖から構成されるもので、転写伸長の障害やDNA切断の可能性を増やすことでゲノム不安定を誘発し、悪性腫瘍をはじめとする様々な疾患の起因となることが示されている。申請者は、m6A修飾以外にもR-loopに集積する未報告のRNA修飾(2’-o-メチル化修飾:Nm修飾)が存在すること、ならびにNm修飾を担う酵素であるFibrillarin (FBL)が口腔がんをはじめとする様々な悪性腫瘍で発現増加することを見出した。DNA:RNAハイブリッドを特異的に認識してRNAを分解する酵素であるRNase H1の変異体(R-loopに結合するがRNAを分解しない)を用いてR-loopを免疫沈降し、質量分析装置を用いて網羅的にRNA修飾をスクリーニングした。その結果、既報のm6A修飾に加えてNm修飾も多く蓄積していることを確認した。またFBLの発現を抑制すると、S9.6抗体で検出されるR-loopのシグナルが核内で増強していたことから、FBLがR-loopの形成に関与していることが示唆された。今後さらに、R-loopのNm修飾の役割や悪性腫瘍との関連性を明らかにし、R-loopやRNA修飾の制御を介した新たながん治療へのアプローチを展開したい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
FBLの発現を抑制することでR-loopのシグナルが増加したことから、FBLはR-loopの形成を抑制していると考えられる。FBLの発現は口腔がんをはじめとする悪性腫瘍において亢進しており、R-loopの蓄積によるゲノム不安定性を解消する働きがあると推察できる。今後FBLやNm修飾がR-loopの形成にどのように働くのか、その機序を解明したいと考えている。 また本研究の過程において、FBLの発現を抑制した場合に、細胞質に巨大な空胞形成を伴って細胞死が引き起こされることを見出した。こうした細胞死が導かれる機序は現在のところ不明であるが、R-loopとの関連性やリボソームRNAの生合成との関連性について現在検討している。
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今後の研究の推進方策 |
FBLが制御するNm修飾がどの転写産物に多いのか、リボソームRNAやメッセンジャーRNAを単離して質量解析を行う。またFBLの発現を抑制した際に合成されるリボソームRNAの質をバイオアナライザーやqPCRで確認する。さらに、リボソームの品質異常を認めた際には、翻訳効率の評価を行う。加えてFBLの発現抑制により細胞質に形成される巨大な空胞についても検討したいと考えている。空胞形成とR-loopの関係性を調べるために、R-loop増加作用をもつカンプトテシンで細胞を処理し、空胞が形成されるか観察したい。また空胞形成に関わっている細胞内シグナル伝達経路も同定したい。 FBLに加えて、FBLと複合体を形成しているNOP56やNOP58をノックダウンし、同様の表現型が得られるかどうか確認したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究はほぼ予定通りに進行しているが、初年度は研究施設の移動もあり研究期間が短かったこともあって残額が生じ、次年度に使用することとした。2023年度には、抗体を多数用いた解析や阻害剤を用いた実験の予定もあるため、研究費の使用額が大きくなることが見込まれる。加えて、学会発表や論文作成にも使用する予定である。
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