研究課題
顎変形症は遺伝要因や環境要因が強く関わり発症する多因子疾患と考えられている。現在、その治療法は主に手術による高侵襲な治療を行っているのが現状であり、低侵襲な新規治療法の確立が期待される。これまで我々は、強力な内軟骨性骨化促進因子であるC型ナトリウム利尿ペプチド(CNP)の血中濃度上昇が、骨系統疾患に生じる顎変形症に対し有効であることを明らかにしてきたが、最適な投与時期の検討は行われていない。本研究の目的は、投薬による低侵襲な顎変形症の新規治療法の確立を目指すことである。ハイドロダイナミクス法はマウス全血と同等の体積に希釈したプラスミド DNA を尾静脈より急速に投与することで、肝臓において高い遺伝子発現が得られることが報告されている。ハイドロダイナミクス法を用いてマウスの肝臓にCNPを遺伝子導入する事により、生後の様々な時期より血液中にCNPを過剰発現させ、有効な投与開始時期の検討を行った。時期については、Scammonの発育曲線を参考に離乳期・若齢期・成熟期のマウスを用い検証を行った。6週齢のWTマウスにハイドロダイナミクス法を用いCNPベクターを投与し、12週齢で評価したところ、CNPによる内軟骨性骨化の促進によりWTマウスにCNPベクターを投与したマウスはWTマウスにEmptyベクターを投与したマウスと比較し高身長を呈し、上顎骨の矢状方向への成長を認めた。また、顎顔面の骨格形成に重要とされている、頭蓋底軟骨結合部の厚みも、WTマウスにCNPベクターを投与したマウスはWTマウスにEmptyベクターを投与したマウスと比較し、軽度に肥厚し、頭蓋底の垂直方向の厚みが増加していた。
2: おおむね順調に進展している
令和4年度に予定していた、生後の様々な時期における、CNPを遺伝子導入したWTマウスの頭蓋骨採取、形態学的解析、軟骨結合部の組織学的解析、投与時期の検討はおおむね順調に進展している。
引き続き、顎変形症の発症メカニズムの解明の研究を行うとともに、臨床応用に向けた研究を継続していく。
コロナ禍で学会の現地参加が制限され、旅費に余裕ができたため。
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PloS one
巻: 17 ページ: e0277140
10.1371/journal.pone.0277140
Archives of oral biology
巻: 139 ページ: 105433
10.1016/j.archoralbio.2022.105433