研究実績の概要 |
進行した口腔扁平上皮癌(OSCC)の予後は不良であり、治療法も限られている。Maspin(mammary serine protease inhibitor)は癌抑制遺伝子として機能するとされているが、ヒト乳癌や肺癌などでは細胞質のみに発現するMaspin (cytMaspin)は独立した予後不良因子であることが報告されている。申請者らはOSCCにおいても、cytMaspinが独立した予後不良因子であることを報告したが、その詳細な分子機構は不明である。本研究では、1)ヒトOSCC細胞株におけるMaspinの細胞内局在に依存した機能解析2) Maspinの細胞内局在制御機構の解析を行い、OSCCの悪性度に関わるMaspinの役割を明らかにすることを目的としている。本研究の成果は、OSCC患者の予後予測や新たな分子標的治療薬を開発する上での基礎的データになることが期待できる。本研究の目的は、OSCCにおけるMaspinの細胞局在依存的な役割を明らかにし、cytMaspinの核移行を阻害する原因タンパクを同定することによって、OSCCに対する新規治療法や予後予測マーカー開発の基礎データを得ることである。 まずは口腔扁平上皮癌細胞株におけるcytMaspinとpanMaspinの機能解析を行った。 OSCC細胞株(KON, OSC20, OSC19, HO-1-N-1, HO-1-u-1等)について、real time PCR法やWestern blot法でMaspinの発現を確認し、多くの細胞株でMaspinの発現が確認できた。また発現したタンパク質について細胞質と核に分画し、細胞内局在を確認したところ多くの細胞株で細胞質優位でHo-1-u-1のみが各優位であった。またモデルを用いてsiRNAでMaspinの発現をノックダウンさせ、浸潤能及び増殖能の変化を検討したが、有意な結果が得られなかった。
|