研究課題/領域番号 |
22K17207
|
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
大林 奈美 広島大学, 病院(歯), 歯科診療医 (00940983)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 味覚異常 / 塩味 / 抗がん剤 / イリノテカン / 味覚 |
研究実績の概要 |
味覚異常はがん化学療法によって生じる主な副作用の一つであり、患者の栄養状態やQOLに深刻な影響を与える。本研究では抗がん剤によって生じる味覚異常の病態や機構の解明を目的としている。2022年度は、two-bottle prederence testによって抗がん剤イリノテカンの投与がマウスの塩味(NaCl)嗜好性を変化させることを明らかにし、味細胞味孔におけるENaCαの発現低下が関与している可能性を示した。また、同量のイリノテカンは甘味(saccharin)の飲水行動を変化させなかったことから、100mg/kgイリノテカン投与は味質選択的に味覚異常を引き起こしすことを示唆した。この結果をまとめ、European Journal of Sciences誌にて論文発表した。(Obayashi et al, 2023) またヒト対象の質問紙調査において、がん化学療法を受ける患者では特に塩味やうま味に対する主観的な味覚感受性の変化を生じやすく、苦味や酸味感受性は障害されにくいことを示した。また、塩味と甘味、塩味とうま味など特定の組み合わせによって味覚感受性が相互に影響し、がん化学療法中の主観的な味覚変化に関与している可能性を示した。 動物実験と疫学研究の両面から、味質によって抗がん剤への感受性が異なることが推測された。これらの知見は、臨床現場での抗がん剤によって生じる味覚異常に対する改善方法や食事指導の考案、また基礎的な味覚受容機構の解明につながると期待される。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初計画したよりもマウス行動実験のデータ取得に時間がかかり、次段階に進むのが遅れたため。
|
今後の研究の推進方策 |
2023年度は、基礎研究ではイリノテカンがマウス塩味受容機構に与える影響について、特に細胞接着に着目した解析を進める。 また、ヒト対象研究も計画中であり、塩味の識別や認識に与える口腔内の影響因子を明らかにする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍でWEB開催された学会が多く、旅費などの請求が当初計画より少なかったため。次年度は現地開催される予定の学会参加および新規に計画中の基礎実験に関する抗体等に使用を予定している。
|