破骨細胞形成の際にRANKLとTNF-αが相乗的に作用することが報告されている。申請者らの研究でTNF-αを破骨細胞前駆細胞に作用させるとRANKLの受容体である RANKの発現が増加することが明らかになっている。また、TNF-αは免疫反応で重要な転写因子NF-kBを活性化させることでRANK発現を促進することも見出してい る。一方、単球をTNF-αで刺激した際に、NF-kBはヒストンメチル化酵素であるSET7/9と結合して核内に移行し、ヒストンH3K4のメチル化を起こすことでヘテロクロマチンからユークロマチンへの移行を促し、炎症に関連する遺伝子の転写の活性化を行っていることが報告されている。本研究では、破骨細胞前駆細胞にお けるTNF-αによるRANK発現の増強のメカニズムにSET7/9が及ぼす影響について解明することを目的とする。 まず、マウス骨髄細胞から破骨細胞前駆細胞を培養し、タンパクを回収後、SET7/9の抗体を用いてウェスタンブロットを行うことで、破骨細胞前駆細胞中のSET7/9の発現を確認した。次に、破骨細胞前駆細胞のSET7/9をリポフェクション法によりノックダウンし、TNF-α刺激時のRANK発現に及ぼす影響をリアルタイムPCRにより解析した。結果、TNF-αにより増強された RANK発現がSET7/9のノックダウンにより減少することが明らかになった。また、TRAP染色の結果より、TNF-αの前処置によりRANKL誘導性破骨細胞形成は増加したが、SET7/9のノックダウンによりこの破骨細胞形成は抑制されたことから、SET7/9はTNF-αにより促進する破骨細胞前駆細胞のRANK発現およびTNF-α/RANKLの相乗作用による破骨細胞形成に関与していることが示唆された。さらに、近接ライゲーションアッセイによりSET7/9とNF-kBのサブユニットであるp65 のタンパク質相互作用が見られ、細胞質に局在している複合体はTNF-αの作用により核内へ移行する可能性が示唆された。
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