研究実績の概要 |
小脳は、運動調節機能のみならず感覚情報統合機能を有することが知られており、嚥下などの複雑な運動の遂行において重要な役割を果たす。嚥下障害の一つである誤嚥は、鼻閉に伴って生じる危険性が高まる。一方、小脳には生後発達の過程で、必要な神経回路のみが選択的に残る「シナプス刈り込み」という現象がみられる。しかし、鼻呼吸障害と嚥下機能障害をつなぐ小脳の「シナプス刈り込み」関与の様相については解明されていない。そこで応募者は、「成長期鼻呼吸障害とそれに伴って生じる嚥下運動障害のメカニズムを、小脳における『シナプス刈り込み』現象の変調を指標として解明する」ことを具体的な目的として本研究を遂行している。 実験には、3日齢マウスを用いる。実験群(鼻閉モデル)は鼻閉塞の目的で、低温麻酔下にて片側外鼻孔を先端直径約0.5mmの鉄製プローブにて焼灼し、感染防止用のクロルテトラサイクリンを塗布する。実験期間中、全身状態の変化を把握するため、飼育期間中、覚醒下にて、実験用パルスオキシメータにより、末梢血中酸素飽和度、呼吸数および心拍数を1日2回定時に計測した。 2, 3, 4および5週齢の実験群および対照群から小脳を取り出し、100μmにスライスし、免疫染色を行い、共焦点顕微鏡にて登上線維と樹状突起までの距離を測定し、プルキンエ細胞に付着しているシナプス形成をしていないまま残っている登上線維の数を計測した。 2, 3, 4および5週齢のマウス小脳のスライス上プルキンエ細胞からホールセル法で電流記録を行う。シナプス入力する登上線維を電気刺激し、誘発された興奮性シナプス後電流(CF-EPSC)の応答ステップ数を計測することにり、入力する登上線維の本数を推定した。
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