研究課題/領域番号 |
22K17224
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
阿部 泰典 東京医科歯科大学, 歯学部附属病院, 医員 (20822513)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 鼻呼吸障害 / 小脳 / 成長期 |
研究実績の概要 |
鼻呼吸障害は、記憶障害や学習障害を含む認知機能の低下を引き起こすことが示唆されている。しかし、脳の発達段階における鼻呼吸障害が、神経回路の形成や記憶・学習以外の脳機能に与える影響については理解されていない。本研究は、鼻閉マウスモデルを使用し、発達の初期段階からの鼻閉がシナプスの発達、神経細胞の活動パターン、および行動に与える影響を検討した。生後3日目のICRマウスの右鼻を焼灼し、片側鼻閉(P3_UNO)マウスを作成した。脳部位として小脳に注目し、その神経回路、神経活動、および行動を解析した。神経回路形成の過程では、一部のシナプスが選択的に強化される一方で、他のシナプスが除去されるシナプス除去がおこる。P3_UNOがシナプス除去に影響するか調べた結果、P3_UNOマウスでは小脳のシナプス除去と神経支配パターンに障害が見られた。発達期と成熟期における小脳プルキンエ細胞の活動パターンを調べた結果、P3_UNOマウスでは両時期において正常な神経細胞活動が行われていないことがわかった。次に、P3_UNOマウスの行動テストを実施した結果、P3_UNOマウスは、オープンフィールド試験における活動性と不安に関連した行動に変化を示さなかったが、Rota-Rodテストで運動機能障害を示し、強制水泳テストでは抑うつ様行動を示した。一方、発達が終了した生後45日目に片側鼻閉処置を行った急性鼻呼吸障害マウスにおいて、生後48日目に行動テストを行った結果、運動機能障害や抑うつ様行動は見られなかった。また、生後52日から54日目に片側鼻閉を行い、約2か月後に行動実験を行った大人における慢性鼻呼吸障害マウスでも、運動機能障害や抑うつ様行動は見られなかった。これらの発見は、発達初期からの鼻からの十分な呼吸が、小脳回路の発達、小脳の正常な神経活動、運動機能および精神的安定に不可欠であることを示唆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概ね予定通りに結果が出ており、まとめを始めている
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今後の研究の推進方策 |
今までの研究成果をまとめ、学会発表を行い、必要に応じて追加の実験を行う
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度費用が、本年度に使用となり余剰分が発生したため
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