本研究は、全国の国立大学歯学部の病院を受診した様々な年代の患者から口腔サンプルを採取し、全身疾患に関与すると言われているCBP 陽性ミュータンスレンサ菌の保有の有無を調査することによって、地域および年代別の CBP 陽性ミュータンスレンサ菌の分布の差異を検討することを目的としている。また、被験者の全身的既往についてアンケートを行い、各疾患における CBP 陽性ミュータンスレンサ菌の感染率について統計学的に分析することで、CBP 陽性菌の関与が疑われる全身疾患を新たに見い出す。さらに、得られたCBP陽性ミュータンスレンサ菌の遺伝子を用いてシークエンス解析を行うことによって、菌ごとの遺伝子配列の違いと全身疾患に対する病原性についても関連性を明らかにしていくことを見据えている。 現在、全国の国立大学歯学部の病院のうち10大学に参加を依頼しており、小児480名、成人960名の口腔サンプル採取を予定している。このうち研究を開始した大学は9施設であり、小児において480名、成人550名の口腔サンプルを採取した。採取した口腔サンプルからは、得られ次第速やかにミュータンスレンサ菌を分離しており、ゲノム DNA を抽出している。得られたゲノム DNA から PCR 法を用いて CBP をコードする遺伝子の検出を行い、CBP 陽性菌の保有者の特定を行っている。また、小児においては得られたゲノムDNAを用いて分析を行い、口腔内環境との相関を解析した。
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