本研究では、ラットの顎関節関節円板を剖出し絹糸を用いて円板と頬骨弓を結紮し関節円板を前方に転位させる顎関節円板前方転位術を施行することにより、下顎頭の変形を惹起しプロテオグリカンの産生低下、およびTMJ-OAにおける主要な破壊因子である基質破壊酵素MMP-13の増加が認められるTMJ-OAの新規実験系を確立した。 関節円板前方転位は顎関節症、変形性顎関節症の病態として一般的であり、関節の緩衝材である関節円板が転位する事で、下顎頭と関節円板の後部結合組織が直接接触する事が下顎頭に悪影響を与えるとされているが、その詳細は不明である。そこで、関節円板前方転位モデルラットの後部結合組織からRNAを抽出し、次世代シークエンサーを用いてトランスクリプトーム解析を行い網羅的に遺伝子発現を解析することで、関節円板転位を伴う変形性顎関節症において後部結合組織が与えている影響を検討した。その結果、破骨細胞分化を誘導するBMP-3b、SOSTDC1や軟骨内骨化を調整するChadなどの遺伝子発現が活性化し、一方で脂質代謝・脂質酸代謝に関与するUcp3、Apoa1などの遺伝子発現が抑制されていることが明らかになった。
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