研究課題/領域番号 |
22K17237
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研究機関 | 明海大学 |
研究代表者 |
藤本 舞 明海大学, 歯学部, 客員助教 (00818297)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 唇顎口蓋裂 / 歯肉歯槽骨膜形成術 / 口腔内スキャナー / 上顎骨 |
研究実績の概要 |
唇顎口蓋裂は、日本において比較的高頻度にみられる先天性疾患の一つである。近年では、医療の進歩に伴い、唇顎口蓋裂患者における治療法も発展し、健常児と変わらない機能と形態の獲得が求められるようになってきた。我々は、現在多くの唇顎口蓋裂児に対し、口蓋床を用いた術前顎矯正後、口唇形成術と同時に歯肉歯槽骨膜形成術 (gingivoperiosteoplasty (GPP)) を施行している。本研究では、GPP施行前の術前顎矯正の治療プロトコールの確立を目的とした。そこで本申請では、①術前顎矯正の治療結果に関連する因子の検討と、②口腔内スキャナーによる乳児、新生児の光学印象法の確立を目的として研究を行うことを目的とした。研究計画として、まずはじめに術前顎矯正の治療結果に関連する因子を解析するために、模型の三次元モデル上での各計測項目の測定、関連する因子の探索を行うことと、術前顎矯正の開始時と終了時の上顎歯列形態の変化を観察することとした。 大学病院矯正歯科を受診し、出生直後より口唇形成術直前まで術前顎矯正を行ったUCLP児の術前顎矯正開始時、終了時の上顎歯列模型を用い、口腔内スキャナーで術前顎矯正の治療前後歯列模型を撮像し、得られたSTLデータ上に、三次元分析ソフトを用い、三次元モデル上に計測点、基準平面を設定し、距離・角度計測を行った。その結果、8例で両側歯槽突起が接触し(接触群)、5例で接触がなかった (非接触群)。術前顎矯正開始前の鼻中隔下端と正中矢状平面間の水平距離や鼻中隔下端の側方偏位量は、非接触群に比べ接触群で有意差を認め、術前顎矯正開始前の鼻中隔下端と正中矢状平面間の水平距離と、術前顎矯正前後の顎裂間距離の減少量間に正の相関があった。本結果を、日本口蓋裂学会、日本矯正歯科学会にて発表した。学会にて発表後、海外誌 (Cleft Palate Craniofac J)へ投稿し、受理された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、術前顎矯正の治療結果に関連する因子を解析するために、当科を受診した唇顎口蓋裂児の上顎模型を計測した。その結果、8例で両側歯槽突起が接触し(接触群)、5例で接触がなかった (非接触群)。術前顎矯正開始前の鼻中隔下端と正中矢状平面間の水平距離や鼻中隔下端の側方偏位量は、非接触群に比べ接触群で有意差を認めた。術前顎矯正開始前の鼻中隔下端と正中矢状平面間の水平距離と、術前顎矯正前後の顎裂間距離の減少量間に正の相関を認めた。以下の結果を得たことから、当結果を2021年の第46回日本口蓋裂学会、2021年の第80回日本矯正歯科学会にて発表した。また、2021年に第46回日本口蓋裂学会シンポジウムにて口演発表も行った。学会にて発表後、海外誌 (Cleft Palate Craniofac J)へ投稿し、2022年3月に受理された。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題では、①術前顎矯正の治療結果に関連する因子の検討と、②口腔内スキャナーによる乳児、新生児の光学印象法の確立を目的として研究を行うことを目的とした。 現時点では、①術前顎矯正の治療結果に関連する因子の検討に関して、良好な研究結果が得られおり、すでに論文として発表した。 今後は、②口腔内スキャナーによる乳児の口蓋印象法の確立に関して、研究を遂行していく予定である。 まずは、唇顎口蓋裂児の口腔内スキャナーによる光学印象採得用モデルの開発を行い、光学印象によって作製した口蓋床を使用した術前顎矯正の治療結果の検討を行っていく予定である。各学会発表を計画し、その後は論文投稿を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度は、研究内容上、使用機器が既存の物を使用し、研究が可能であったため、助成金の未使用額が発生した。次年度は、使用する機器も増加する予定である。さらに学会発表も多数予定している。さらに、複数の論文作成を検討しており、計画通り研究を遂行していく予定である。
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